ここは、光太郎夫婦の部屋です。 ここは、1階の書斎です。 ここは、執事の部屋です。 ここは、家庭教師の部屋です。 ここは、伝説館の大広間です。 ここは、1階の浴室です。 ここは、龍之介がつかっている 1階の客室です。 ここは、客室です。 ここは、伝説館の食堂です。 ここは、台所です。 811b ここは、台所のとなりにある倉庫です。 ここは、使用人用の小食堂です。 ここは、書生部屋です。 ここは、庭番の部屋です。 ここは、駐車場です。 ここは、伝説館の中庭です。 ここは、光彦夫婦の部屋です。 ここは、光夫の部屋です。 ここは、絹代の部屋です。 ここは、影次郎夫婦の部屋です。 ここは、麗子の部屋です。 ここは、サダの部屋です。 ここは、女中部屋です。 ここは、2階の洗面所です。 ここは、2階の物置です。 部屋のドアには、鍵がかかっていてあきません。 部屋のドアには、鍵がかかっていてあきません。 龍之介は、捜索をやめた。 80268018802b812a82268210842c 伝説館に、やがて、夜がやってきた。 龍之介は、捜査をつづけていた。 ここには、誰もいません。 ...よし、ここを調べてみるか... ここは、現場ではありません。 ...ここが、事件の現場か... 龍之介は、現場を調べはじめた。 ここで、容疑者を、 尋問することはできません。 ...よし、事件の容疑者をここによんで、 といつめてみるか... まだ 容疑者をよびだすことは、できません。 まだ、容疑者は 誰もいません。 まだ、容疑者は、誰もいません。 840f841fe426 サダは、よんでもこなかった。 84208428 影次郎は、よんでもこなかった。 ここで仲間をよびあつめることは、できません。 いまは、ひるまです。屋敷の中には、 山神家の人たちが、うろうろしています。 こっそりと、仲間をよびあつめるのは、むりですね。 8019801a801b801c801d ...おい、みんな、あつまってくれ... 私は、山神家の人たちに気づかれないように、 こっそりと仲間の探偵たちを 部屋によびよせた。 この窓からは、中庭は見えないようだ... ý ý ベッドの下には、何もおちてない... ý ý テーブルのうえには、スタンドがあるだけだ... ý ý 何もおちていないな... ý ý いまのところ、事件に関係ありそうなものは、 何もなさそうだ... ý ý ý ý ý ひろい机だ。とくにおかしなところはない... ý ý ふつうのいすだ。きずもないようだ... ý ý 8012 たくさんの本がならんでいる... 事件に関係ありそうな本は、あるかな... 801f ...おや、これは何だろう?... 龍之介は、本棚の本を、いっさつずつ、 ゆっくりと調べていった。すると、何さつめかの本の あいだから、いちまいの借用書がでてきた。 ...ここには、もう てがかりは、ないらしい... 何も、おちてないな... ý ý ここには、ほかに事件に関係ありそうなものは、 ないようだな... ý ý ý ý ý この部屋の窓からは、 駐車場が、よく見える... ý ý おや、机のひきだしには、 鍵がかかっていてあかないぞ... ý ý ふつうのいすだ... ý ý 何もおちては、いないようだ... ý ý ほかには、事件のてがかりになるようなものは、 何もないらしいな... ý ý ý ý ý この部屋の窓からは、 駐車場が、よく見えるな... ý ý ベッドの下にも、ベッドカバーにも、 何もないな... ý ý おや、クリスティのきがえが、いれてある。 のぞいちゃわるいな... ý ý きれいにそうじがしてあって、 ごみひとつ、おちてない... ý ý この部屋には、ほかには何もなさそうだ... ý ý ý ý ý ひろい階段だ。2階にあがる階段は、 ここと、台所のよこのふたつか... ý ý りっぱなシャンデリアだ... ý ý きれいにみがきあげられて、ぴかぴかにひかっている。 ここのそうじは、ずいぶんとたいへんだろうな... ý ý ほかには、何もなさそうだ... ý ý ý ý ý ý ý ý ここの窓は、あけられない... ý ý みずは、たまっていない... ý ý とくに、かわったところはないな... ý ý きがえをするところらしい... ý ý ほかに、調べるところはなさそうだ... ý ý ý ý ý ベッドは、きれいにメイキングされている... ý ý ちいさいが、センスのいいシャンデリアだ... ý ý このだんろは、あまりつかわれていないようだ... ý ý 何もおちていないな... ý ý 事件に関係ありそうなものは、 ほかには何もないな... ý ý ý ý ý ごくふつうのテーブルがあるだけだ... ý ý ふつうのいすだ... ý ý だんろの中には、何もない... ý ý 何もおちていない... ý ý ý ý ý ý ý ý 窓には、カ-テンがかけてある... みなみがわの窓からは、中庭が見える... ý ý テーブルのうえには、ろうそくをたてる しょく台がおいてあるだけだ... ý ý ウォールナットのいすか...ごうかなものだ... ý ý 何もおちてないようだ... ý ý 食堂の棚におかれている食器には、 すべて山神家のイニシャルが入っている... ý ý ý ý ý とくにかわったところは、ないな... ý ý たくさんの食器がならんでいる... ý ý おいしそうなにおいがする... ここで、パンやケーキをやいているかな... ý ý 何もおちてはいないな... ý ý おおきな はかりがあるな... でも、とくにかわったところはなさそうだ... ý ý ý ý ý たなのうえには、たくさんのものがならんでいる。 811c たくさんのワインのビンがならんでいる... おや、このいちばんはしのワインは、 ふたが、あいてるぞ... ここには、もう、てかがりはなさそうだ... くらくて、よく見えないが、 何もおちてないようだ... ý ý 棚にならんだかんずめも、 めずらしいものばかりだ... ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ここは、駐車場のとなりか... ý ý しろいテーブルクロスが、かけてある... ý ý ふつうのいすだ... ý ý 何も、おちてない... ý ý この部屋には、ほかに調べるものは、 何もなさそうだ... ý ý ý ý ý 窓ガラスがよごれているな... ý ý 机のうえには、何もない... ý ý べつに、かわったとこのないいすだ... ý ý 何もおちていない... ý ý 何もないな... ý ý ý ý ý 入口のところは、土間になっている... ý ý べつに何もおちていない... ý ý ここには、何もないな... ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý アメリカせいの自動車か... 日本には、まだ何台もあるものじゃないな... ý ý 何もおちてはいないな... ý ý ほかには、何もないな... ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ひろい庭だ... 811f おや...こんなところに、なにか おちているぞ。 これは、コンパクトだ。 もう、なにも、おちてないな。 8117 ふんすいの みずは、でていない... ý ý あるきまわってみないと何も見つからないな... ...何もでてこない... ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý きれいなカーテンがかけてある... ý ý ピンクのベッドカバーか... ベッドに、ふしんなものはないようだ... ý ý はなが かざられている... いい においだ... ý ý 何もおちていない... ý ý ý ý ý ý ý ý 机のうえには、本がおいてある... 「かつどうしゃしんの すべて」か... ý ý この本棚にある本は、 すべて、かつどうしゃしんについてのものばかりだ... ý ý かべにかかっている えは、フランスのものだ... ý ý 何もおちていない... ý ý 8013 事件のてがかりになるものは、 何もなさそうだ... 8119 おや、部屋のすみに、何か つつみが、おいてある。 なんだろう...あけてみよう...な、なんだ? こいつは、狼男の手!? いや、よくみたら、 手袋じゃないか... ...もう、何も、みつからないな... ý ý ý この部屋の窓からは、中庭が見える... ý ý ベッドの下には、何もない... ý ý 机のうえには、何もない... ý ý ふつうの いすだ... ý ý まるい鏡だ... うらを見ても、何もかくされてはいない... ý ý とくに調べるものは、なさそうだ... ý ý テーブルのうえには、はいざらがある... ý ý 鏡台のひきだしをあけてみよう... けしょうひんが、たくさん入ってるな... 820e ...おや、鏡台のいちばん下のひきだしに 何かはいったいるぞ...おう、これは 日記だ... ...ここからは、もう、てがかりはみつかりそうも ないらしい... ソファの下に、何かおちていないかな... 何もないか... ý ý 何も、おちていないな... ý ý 事件に関係ありそうなものは、 ほかにはなさそうだ... ý ý ý ý ý 窓からは、中庭が見えるな... ý ý きれいなベッドだ... ý ý 何もおちてない... ý ý この部屋は、こうすいのにおいがする... ý ý ý ý ý ý ý ý ひろい部屋だな。12じょうは ある... ý ý とくに、何もなさそうだ... 8410 ...とこのまの ところに、何かあるぞ... これは...薬ビンだ!... 事件に関係ありそうなものは、 何もなさそうだ... ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý この部屋は、あまり日があたらないようだ... ý ý 女中たちがつかっているものらしいな... ひきだしには、手鏡やくしが入っている... ý ý 何も、おちてないな... ý ý ふすまをあけると、おしいれだ... ふとんが入っている... 840d ...おや、おしいれの中に、何かあるぞ。 ふろしきつつみだ。誰かのにもつらしい... 中には...? おや、これは、何だ? ダイヤの指輪じゃないか!... もう、何もないらしいな... 事件に関係ありそうなものは、 何もないな... ý ý ý ý ý 窓からは、駐車場が見える... ý ý 棚の中には、しろいタオルが入っている... タオルの間には、何もかくされてはいない... 8413 ...おや、しろいタオルのあいだに、なにかあるぞ! これは...ちのついたナイフだ!... ...もう、てがかりはないな... とくに、何もなさそうだ... ý ý 何もないな... ý ý 事件のてがかりになりそうなものは、 何もなさそうだ... ý ý ý ý ý わけのわからない、がらくたやビンがおいてある... こんなところを調べていたら、きりがなさそうだ... ý ý ゴホホ...ほこりだらけだ... でも、何もなさそうだ... 8211 ...ゴホゴボ...こりゃひどい。ほこりだらけだ。 おや、でも、すみのほうに、なにかおちているぞ。 これは、ハンマ〜だ... ...あとは、何もなさそうだな... うむ、何から調べたらいいのか... ここで事件のてがかりを捜すのは、むりかな... ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý 9224820f 龍之介は、その日記をとった。 ...これは、光太郎の遺言状... 龍之介は、遺言状をてにした。 8212 ...このハンマ一は、いったい?... 龍之介は、ハンマ一をとった。 811ad1278113 龍之介は、その狼男の手袋をとった。 811da122e127 ...もしかしたら、これが、光太郎がのんだ ワインだろうか... 龍之介は、ワインをとった。 8120f127 ...誰のコンパクトだろうか... 龍之介は、それをポケットに入れた。 840e 龍之介は、そのダイヤの指輪を、 ポケットに入れた。 8020 ...光太郎は、誰かに金をかしていたのか.. 龍之介は、その借用書を てにした。 8411 ...何の薬だろうか... 龍之介は、薬ビンをポケットに入れた。 8414 ...これは、凶器なのだろうか... 龍之介は、そのナイフをハンカチでつつみ、 うわぎのポケットに入れた。 ここには、とるようなものは、何もありません。 ここには、誰もいません。 事件のあとは、きれいにかたづけられていて、 何ものこっていないな... 広間は、きれいにかたづけられている... とくにかわったようすは、ない... このバスタブで、享平は殺されていた... 現場には、何ものこっていない... とくにかわったようすは、なそさうだ... おたみは、この部屋で、 何をきいたのだろうか?... 現場には、何ものこっていない... とくにかわったことは、何もない... とつぜん、あしおとがして、 誰かが、龍之介の目の前にあらわれた。 時は、1921年... 事件は、伝説館とよばれる 山神家の屋敷でおこった... その夜、伝説館には、 きみょうなすがたをした男女があつまっていた。 大広間では、狼男がさけをのみ、 ドラキュラが、ダンスをおどっていた。 「...ねえ、おじさまったら、ほんとうに この仮装舞踏会で、ごじぶんの 遺産相続人をはっぴょうなさるのかしら?」 「...ああ、どうやら、そのつもりらしいな。 それにしても、金もちの気まぐれには、 まったく、つきあいきれないぜ。 俺たちに、こんなかっこうまでさせてさ...」 「今夜は、 私のためにあつまってくれて、 ありがとう。 どうだ、仮装舞踏会を たのしんでくれているかね。 ははは!!」 「さて、それでは いよいよ、 私の遺産を相続してもらう者の 名前を はっぴょうするとするか... まずは、その前に かんぱいだ」 「伝説館の夜に、かんぱい!!」 「かんぱ〜い!」 「うっ....」 「ど、どうなさったの...あなた...」 「だんなさま...!!」 「きゃあ!! 死...死んで...いる...」 龍之介は、伝説館とよばれる 山神家の中で、いよいよ 事件の捜査にのりだすこととなった。 ...まずは、屋敷の中のようすをさぐろう... ...まずは、この屋敷の中の ようすをさぐるとしよう... 龍之介が、伝説館ですごした ひとつめの夜は、あっというまにあけた。 ...いよいよ、これからが、ほんとうの捜査だ。 龍之介は、捜査をはじめた。 光太郎をめぐる山神家の 人間関係は、やはりふくざつそうだ... しっかり、情報をあつめないと、いけないな... 享平が殺された夜が、あけた。 光太郎につづく、享平殺人事件... 犯人のだいたんなこうどうに、 龍之介は、捜査の手をやすめなかった。 ...よし、がんばるぞ... 龍之介は、きあいをいれて、捜査をはじめた。 おたみが殺された夜があけた... いったい、犯人は、何をかんがえて、 おたみを殺したのか... ...そうだ、犯人は、きっとあせっているんだ。 龍之介は、事件について そう、かんがえていた。 龍之介は、おいつめられた犯人たちを おって、書斎の地下から、 謎の迷路へと、おりていった... 犯人はここにいる... 龍之介は、地下の迷路を あるきはじめた... 龍之介は、仲間をかえした。 書斎から発見された いちまいの借用書.. いったい、光太郎から金をかりていたのは誰か? そして、きんたいちのカンは、あたるか? 伝説館の夜は、ふけていった... 光太郎の事件につづく享平の死は、 山神家の人びとにうずまく、 ふあんとぎわくを、いっそう つよめていった... おたみの死によって、伝説館は、 おもくるしい ふんいきに、つつまれていった... 円陣龍之介は、犯人をおって... 書斎の下につづく 山神家の地下の迷路に あしを、ふみいれた... 本日の捜査、ごくろうさまでした! 龍之介は、竜野のことばをきき、書斎に むかった。すでに、書斎には、龍之介の 仲間たちが、あつまっていた。 「所長、たしかに、竜野のいうとおりで ござんす。この机のしたの ゆかは、はずれて、 地下につづいてますぜ」 「所長、サダと影次郎は、 光一郎ちゃんをつれて、この中にいるに、 ちがいありません」 「迷路で、所長にもしものことがあったら、 クリスティのことは、ぼくがひきうけますよ」 ...な、なにをいうんだい。クリスティ、 ぼくは、かならず、かえってくるからね... 「...ポリポリ、所長って、みかけによらず、 そそっかしいからな...まよわないでくださいね..」 「オウ、龍之介、ワタシ、とてもシンパイ。 でも、あなたなら、きっとダイジョウブ。 もうすこしで、事件もかいけつするワ。 がんばってネ!」 ...なんということだ、あの享平が殺された... 享平は、1階の浴室で、バスタブに その体をしずめ、死んでいたのだ... ...犯人は、ふろにはいっている享平に、 こっそりとちかづき、うしろから頭を何かでたたき、 そのあと、でき死させたようだ... 812b しかし、いったい誰が、何のもくてきで享平を? 伝説館でおきた事件は、 まるで、龍之介にいどむかのように、 ついに、その目の前でおこったのであった... おたみが、殺された... おたみの死体は、客室でみつかった。 おたみの発見者は、麗子であった。 おたみは、ほそみの はもので、さされ、 いきをたえていた。 8227 光太郎、享平、おたみとつづく、 殺人事件の謎は、はたして何なのか、 龍之介の捜査は、つづいていった... とつぜん、龍之介の前に、 ヘいじが、とんできた。 「所長、ていへんだ! 事件です!!」 「所長、捜査はどうですか?」 そこには、ヘいじがいた。 「所長でしたか」 そこには、ころんぼがいた。 「やあ、所長」 あけちがでてきた。 「ポリポリ...」 そこには、きんたいちがいた。 「オウ、龍之介デシタカ」 そこには、クリスティがいた。 龍之介は、捜査をやめた。 「いまのところ、あたらしい情報は、 何もござんせん」 「所長、この屋敷の庭番は、まったく、 てへえんな仕事ですぜ。ほら、庭のくさむしりで、 こしがいたくて、いたくて...」 ...ヘいじさん、むりしないでくれよ... 8225 「所長、きんじょの人たちからきいた話なのですが 光太郎と影次郎の父親は、ふたりが まだ、あかんぼうのころに、死んだそうでござんす」 842b 「所長、影次郎のようすが、どうも、おかしい ようでござんす。どうか、気をつけてくだせえ」 「ここの台所は、せつびがいいですよ。ちょうど、いま パンがやけたところなんです。どうぞ、たべていって ください...ねえ、なかなかいけるでしょ」 ...うーん、ころんぼは、りょうりもウマイ! 「所長、こんどは、にこみシチューをつくって みたんです。ブフ・ブールギニョン、あかワインを いれるとおいしんですよね」 ...うーん、いいにおいだ... 9225 「この倉庫には、たくさんのワインがありますが、あの仮装舞踏会の夜に、光太郎がのんだ ワインは、どうやら、光彦が、舞踏会用 にといって、かってきたものらしいですね」 942b 「所長、サダばあさんのようすが、どうも、 おかしいですよ。しょくじは、部屋まではこんでいるの ですが、ぜんぜん、たべていないのです」 「この家のわかい女性たちは、なかなか、 うつくしい人たちが、おおいですね」 ...そうかな...ぼくは、やっぱり、 クリスティが、いちばんだと思うけど... 「この車は、光太郎のじまんのものだった ようですね。じぶんの気にいった人間しか、 車にのせなかったそうです」 a225 「殺された光太郎は、ここ、はんとしほど、 どうも、ようすがおかしかったようですね。お春ちゃん が話していたのですが、使用人をいみなく しかって、とつぜん、やめさせたりしていたそうです」 a42b 「所長、雪江さんは、だいじょうぶでしょうか?」 ...へえ、かのじょが、あけちくんの しゅみなのか... 「ポリポリ...ふああ、たいくつですね。 何か、おもしろいことないかなあ」 ...まったく、きんたいちときたら、 いつも、ぼーとしてるんだから... 「所長...ぼく、おなか、すきました。ポリポリ.. なんか、たべるものないっすか?」 b225 「...ポリポリ...殺された光太郎は、 なかなか、べんきょうかですよ。書斎の本は、 どれも、むずかしい本ばかりで、ぜんぶ、よんだあとが ありまっす...」 b42b 「...ポリポリ...事件をかいけつして、 はやく、かえりたいなあ...」 「龍之介、がんばってネ!」 ...わかってるよ、クリスティ、 事件がかいけつしたら、ゆっくり、しょくじでも いこうね... 「ごくろうサマ。捜査、がんばってネ!」 ...もちろんだよ、クリスティ... c225 「おべんきょうをみているときに、絹代ちゃんが 話していたのダケレド、ちかごろ、この伝説館に 夜にナルと、おばけがでるっていうウワサがあるそうよ」 c42b 「龍之介、あなたなら、きっと事件をカイケツ できるわ。ガンバッテネ!」 ...うん!... 「ここを調べたいんだ」 「どうぞ」 ここは、現場ではありません。 仲間を尋問しても、むだですよ。 「所長、いま、みんなをよびあつめるのは、 ここでは、むりでござんす」 「こんなところで、みんなをよべません」 「所長、ここでの さくせんかいぎは、 きけんです」 「ポリポリ...こんなところで、みんなをよべったって むりだす...」 「龍之介、ここでみんなをよぶのは、 キケンだわ」 801e 「光太郎の死因は、ワインに入っていた 毒薬によるものです。光太郎の死体は、 竜野がしりあいのびょういんに、こっそりと はこびこんでいるそうです」 ý ý 「氷沼享平は、うしろから頭を、かたい なにかで、なぐられたようです」 ý ý 「おたみのきずは、誰かと、もみあっているうちに さされたもののようですね」 ý ý 「光太郎は、じぶんの遺産を誰につがせる つもりなのか、家族には、ぜんぜん話して いなかったミタイネ」 ý ý 「もしかしたら、かれは、犯人をしっていた のではないカシラ?」 f422 「氷沼享平は、光彦の秘密をにぎって いたのではないかしら」 ý 「おたみさんは、きっと犯人を見たのよ」 ý ý 「所長、どうなさったんです? あっしには、そいつが容疑者だなんて、 思えませんですよ」 8416 「所長、そいつは といつめてみる ひつようが ありそうですな」 8418 ý 8214 ý ý 8216 ý 8218 ý 8125 ý ý ý ý 8123 ý 841a ý ý ý 「そいつの じんもんは、すすんでますかい?」 「そいつは、犯人じゃなかったんでやんすね」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý 「所長、あせっちゃいけませんぜ。 捜査は、これからです。 容疑者は、まだ あがっちゃいやしませんぜ」 「りつは、光太郎が仕事のせったいに つかっていた、りょうていの娘だそうです」 8415 「りつは、ちかごろ、光太郎とよく、けんかを していたらしいですよ」 ý 「サダの目がわるくなったのは、 光太郎が、この伝説館をたてたころからの ようです」 8417 「サダの夫は、光太郎と影次郎が、 まだあんかぼうのころに、死んでいて、サダは、 ずいぶん、くろうして、ふたりをそだてたらしいですね」 ý 901e 「影次郎は、なんどかじぶんで、事業をやって みたようですが、どれもしっぱいして、いまでは、 光太郎にやしなってもらっているありさまですね」 9213 「影次郎は、あちこちに、借金があるようです。 光太郎とちがって、金にだらしない男の ようです」 ý 「冴子は、むかしは、げいしゃをやっていて、 影次郎に、みそめられて結婚したそうです」 ý ý a01e 「光太郎は、光彦を いしゃに したかったようですが、光彦は、いしゃにはならず、 父親のきたいをうらぎって、事業家の道を えらんだそうです」 9215 「山神貿易での、光彦のひょうばんは、 あまりよくないようです。父親とちがって、 ごういんに、仕事をするタイプではないようですね」 ý 「雪江の実家は、びんぼうな名家で、 光彦との結婚も、実家の借金のため だったといわれているようです」 9217 「雪江は、このところ、しょくよくもなく、 げんきがないようです。あのかおは、どうみても、 なやみごとのある人のかおですよ」 ý 「光夫は、父親の光太郎に、すっかり はんこうしていたようですよ。舞踏会の前には、 しんろのことで、父親とはげしいケンカをしている そうです」 ý ý 「絹代は、わがままなおじょうさんですが、 ほんとうのところは、たかんな おとめのようですね」 ý ý 「光太郎は、このあかんぼうを、とても かわいがっていたという話です」 ý ý 「麗子は、父親の影次郎を、とても きらっているようです。それから、享平との 結婚話は、じぶんから、いいだしたことのようです」 ý ý b01e 「氷沼享平は、1年ほど前から、 この屋敷に、でいりしはじめたようで、 麗子には、ずいぶん、せっきょくてきに、 アプローチしていたようですね」 ý ý c01e 「竜野は、私たちのうごきまで かんししているようで、どうも、あやしいかんじがします」 8419 「竜野のうごきは、あやしいですね。 どうも、おちつかないようすです」 ý d01e 「おたみは、じぶんより、あたらしい使用人 には、いじが、わるいくらい、きつくあたるんです」 ý ý 「お春ちゃんは、いいこですよ。 はたらきもので、あかるい子です」 ý ý 「こうかいてあるわ...娘をあんなやつに、 わたすくらいなら、いっそ、殺したほうがましだ... いったい、これは、どういうイミかしら?」 8213 ý ý 「どうやら、これが享平殺しの凶器ミタイね。 ヘいじさんの情報によると、これは、 この屋敷の倉庫においてあったものヨ。 誰でも、もちだせるらしいわ」 ý ý 812e 「これは、きっと、 狼男の仮装につかったものね」 812c 「ネエ、龍之介、 これは、光彦のモノらしいわネ...」 ý 812f 「このワインは、光太郎が、 仮装舞踏会の夜に、のんだものと おなじものダワ」 b12c 「このワインを、誰かが、倉庫に かくしていたのヨ...」 ý 「これは、わかい女性のものよ。 誰が、中庭におとしたのかしらね?」 8217 「どうやら、これは、雪江さんのもののようね」 ý 842e 「どうして、おたみさんのにもつの中から、 このダイヤの指輪がでてきたのか... ソレが、もんだいダワ」 「りつさんは、影次郎さんをかばって、 これをおたみさんに、わたしていたらしいわネ」 ý 90218027812d 「この借用書は、はんとし前にかかれていて、 金がくは、5せんえんネ。かしぬしは、光太郎だわ でも、かんじんの、かりぬしの名前のところが、 やぶられていて、わからなくなっているワ...」 912ca12c 「山神光太郎に金をかりていたのは、 いったい、誰なのかしらネ?」 「どうやら、このかりぬしは、影次郎のようね」 9429 「龍之介、これは、ストリキーネよ。これが、 光太郎殺しのどくやくだわ!」 ý ý 842f 「ナイフには、ちが ついているわ」 ý ý 「龍之介、オチツイテヨ。 証拠品は、マダ、何も見つかってナイワヨ」 e01e 「たおれた光太郎には、妻のりつが、 いちばんに かけよっていますね。それが、いがいと おちついていたようだという話なんですがね」 ý ý 8215 「享平を発見したのは、お春ちゃんです」 ý ý 「おたみを発見したのは、麗子です」 ý ý 「光太郎の遺産は、ばくだいなものらしいです。 やっぱり、こんかいの事件は、この遺産が めあての殺しでしょうね」 ý ý 「光太郎は、ちかごろ、びょういんに、 いっていたそうですよ」 ý ý 「仮装舞踏会をひらくことに、 家族は、みんな、はんたいしたようでしたが、 光太郎が、その はんたいを、おしきって、 ごういんに、ひらいたようです」 ý ý 「山神光太郎は、金にきびしい男だった ようです。光太郎に借金をした者は、みんな きびしい、とりたてにあっているようです」 ý ý f01e 「この洋館は、光太郎が、10年前に たてたものです。伝説館という、よび名は 光太郎が、じぶんできめたらしいですよ。なんでも 伝説にのこるような家にしたかったからだそうです」 ý ý 「はい、たしかに、光太郎と影次郎は、 母親のちがう兄弟らしいですね。ふたりとも、 おなじ年にうまれていて、どちらかが、父親が、 そとで、うませたこどもだそうです」 ý ý 龍之介は、調査をやめた。 ý 龍之介は、調査をやめた。 8021 「ポリポリ...ぼくが、倉庫や物置を 調べようとしたら、執事の竜野が、 ひどくおこって、とめるんでやんす...」 9027 「ポリポリ...ぼくには、なんだか... また、事件がおこりそうな気がするな...」 「...うーん、ポリポリ、ねむたいなあ...」 ý 8412 ý ý ý 「何か、ごようでしょうか?」 そこには、山神りつがいた。 「あら、円陣さんでしたの...」 そこには、りつがいた。 ý ý 「私に、なにか...」 そこには、りつがいた。 「お話をうかがいたいのですが...」 龍之介は、りつに 話をきくことにした。 「円陣さん、私は、すべてをお話しました。 もう、もうしあげることは、何もありません」 「この部屋を調べたいのですが」 「わかりましたわ...どうぞ」 「この部屋を調べさせてください」 「ここに、あやしいものなど、何もありません。 おことわりしますわ」 「ここは、事件の現場ではありませんわ」 「私は、犯人ではありませんもの。 尋問されるひつようなどないはずです」 「何ですの...」 「すべて、お話いたしましたわ」 ここで、仲間をよぶことは、できません。 80018022 「主人が死んだなんて、まだ、信じられませんわ。 それに、まさか、この家の中に主人を殺したいと 思っていた人間がいたなんて...」 「主人が、どうして殺されたのか、 私には、けんとうもつきません」 ý 「......」 8201 「まさか、享平さんが殺されるとは... おどろいていますわ」 ý 9401 「おたみが殺されるなんて...」 りつは、あおざめたこえで、そういった。 8101 「主人は、なにごとにもいっしょうけんめいで、 仕事ねっしんな、すばらしい人でしたわ」 「主人は、いつも、この山神家のことを かんがえて、いっしょうけんめいでしたわ」 ý 8201 「あの人は、麗子さんを愛しているのではなく、 きっと、この家の財産が、めあてだったのです」 ý ý 「おたみは、この家のことをしりすぎた のかもしれません...」 ý ý 「私ですわ」 ý ý 「主人の母ですわ。主人は、あの母のために、 この伝説館をたてるときにも、わざわざ 日本間をつくりましたのよ」 ý ý 8104 「影次郎さんは、主人とは、 まったく、せいはんたいの性格の人なんです。 影次郎さんには、じぶんのちからで、 何かをするという きもちがないのです」 「影次郎さんが、何かしたのでしょうか...」 ý 「冴子さんは、おそだちのせいかもしれませんけれど、 いつも、めさきのことばかり、かんがえているようで、 私には、よく、りかいできません」 ý ý 8106 「これからは、光彦さんが、この山神家の 主人になってもらわなければ...主人が のこしたこの家を、しっかりまもってもらいたいと 思っています」 ý ý 「雪江さんも、もっと光彦さんの妻らしく ふるまってくれると、よろしいのですが...」 ý ý 8108 「光夫も、ちかごろは、むずかしい年ごろのようで、 あのくらいになると、母親のいうことなど、もう、 きいてくれなくなるのですね...」 ý ý 「絹代も、主人があまやかしてそだてたせいか すっかり、わがままになってしまいました。でも、 こんどの事件では、私のことを とてもしんぱいして くれていて、やさしい娘です」 ý ý 「光一郎は、私たちのはじめての まごですわ。 主人も、あのこの たんじょうを、とても よろこんでいましたわ」 ý ý 810b 「主人は、麗子さんの結婚について、 いろいろと、しんぱいしていましたわ」 ý ý 810c 「主人は、あの男をきらっておりました」 「主人は、享平さんと麗子さんの結婚には、はんたいしておりました」 ý 810d 「竜野は、いつも、この山神家のことを かんがえてくれていますわ」 「竜野がどうか、いたしまして?」 ý 「おたみは、私が主人と結婚する前から この家で、はたらいているのです」 ý ý 「お春は、まじめに、よくはたらいてくれてますわ」 ý ý 「私は、山神光太郎の妻です。 舞踏会の時は、ずっと主人のそばにいました。 私は、カルメンの仮装をいたしましたわ」 「私には、何もわかりませんわ」 ý ý ý 「私は、何もしりませんわ」 ý ý ý ý ý 「それは...主人があの舞踏会のときに のんでいたワインですわ」 ý ý c201 「私のものでは、ありません」 ý ý a401 「そ、それが...どうしたというのですか?...」 ý ý 「主人が、誰かにお金をかしていたという話は、 きいたことがありますが、それが、誰なのかは、 しりませんわ」 ý ý 「私は、何もしりません」 ý ý ý ý ý 「主人が、たおれた時は、おどろきました。 いったい、何がおこったのか、りかいすることが できないくらい、きもちが、どうてんしましたから」 ý ý 「遺産のことについては、すべて竜野に まかせてありますから...」 「主人の遺産を、たとえ 誰が相続することになろうと、 私には、どうでもいいことなのです」 ý 「私が、主人のもとに、とついだのは 18の時でしたわ」 ý ý a201 「主人は、私のことを たいせつにしてくれておりました。 私たちは、しんらいしあっていましたから...」 ý ý b401 「何のことでしょう...わかりませんわ」 ý ý 「何のことでしょう?...」 ý ý 「ええ、あの舞踏会は、主人がとつぜん いいだしたことでした。主人は、いぜんから、 ああいう あそびがすきでした」 「主人は、どうしても、あの舞踏会を ひらきたかったのです」 ý 8128 「この屋敷は、主人が、ドイツから せっけいしを よびよせて、つくらせたものですのよ」 ý ý b201 「ええ、じつは、主人は、影次郎さんとは、 はらちがいの兄弟です。でも、そんなことが、 どうかいたしまして?」 ý ý 90118024 「円陣さん、はやく、犯人をつかまえてください。 私もそのためなら、なんでも きょうりょくしますわ」 ý 「円陣さん、事件のことで、何かわかったら、 かならず、私に、おしえてくださいね」 8126 「円陣さん、もしも、この家の中に 主人のことを悪くいう人間がいたとしても、 それは、ごかいですから、きになさらないでください」 9201 「いいえ、べつに...」 8222 「円陣さん、これだけは、いっておきますわ。 私や子供たちは、けっして犯人ではありません」 8401 「あなたに、お話することは、何もありませんわ」 842a 「何も...ありませんわ...」 「私、ひとりですわ」 龍之介は、りつをよんだ。 「何でしょうか?」 龍之介は、りつを部屋によびよせた。 「何でしょうか?」 りつは、客室をでていった。 841b 「私は、何も...」 a41cf424 「そ、それは...」 841d 「主人は...くるしんでいたのです...」 941b 「何も、みていませんわ」 b41c 「...」 941d 「私は...」 a41b 「円陣さん、どういう いみですの?」 「何も、かくしてなんて、いませんわ...」 a41d 「うっ..」 「私は、何もしりません」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý 942ee41b 「そ、それは...私が、おたみに わたしたのです... おたみは、しっていたのです」 e41c 「おたみは、享平さんを殺した犯人を しっていました。そして、あなたに、そのことを しらせようとしたのです。でも、私は、そのことを だまっていてくれるように、たのんだのです」 ý 「何も、しりません...」 「....」 ý ý ý ý f41b 「私は、何も...しりません」 f41b 「きっと、それで、おたみをさしたのは、 あの人ですわ...」 ý b41b 「そ、それは...」 c41c 「そんな...」 b41d 「あの人は...」 c41b 「私では、ありませんわ」 d41c 「私のくちからは、いえません...」 c41d 「主人は、かくしていましたが、私はしって いたのです...」 d41b 「私は、ほんとうに何もしりません」 「どうして、私をうたがうのですか?」 d41d 「主人は...もう...たすからない病気 だったのです...」 94069407a412841e 「そうなのですわ...」 りつは、 ついに、真実をかたりはじめた。 「主人は、たすからない、病気でした...」 「そうなのです。いままで、何もかも、いっしょう けんめいに、じぶんの思った道をすすんできたはずの 主人が、生まれてはじめて、じぶんのちからでは、 どうにもならない病気というものにであったのです」 「だから、あの人は、あの仮装舞踏会で、 あの人が死神をえんじ、じぶんのあとをつぐ 者の名前をはっぴょうするなどどいうことを、 かんがえたのです...」 「主人が、仮装舞踏会をするといいだした とき、私は、とめました。でも、主人は、じぶんの 病気のことをしって、死のきょうふに、とりつかれて 私の話など、きいてはくれませんでした...」 「あんな、舞踏会さえ、ひらかなければ、 主人も、そして、享平さんとおたみも 殺されなくて、すんだのに....」 「円陣さん、もう、ここまできたら、おわかりですね。 享平さんとおたみを、殺したのは... あの人なのです...」 そこには、サダがいた。 「ついに、ここまで、おいでなされましたね...」 「誰じゃ...」 部屋の中には、山神サダがいた。 「何のようでございまするか?」 サダがいた。 ý ý ý ý 「お話をうかがいたいのですが...」 「...どうぞ」 龍之介は、サダに話をきくことにした。 「この部屋を調べたいのですが」 「...どうぞ」 「この部屋を調べたいのですが」 「おことわりいたしまする」 「この部屋では、なにも、ちなまぐさいことは、 おこっておりませぬ」 「何をおっしゃいまする。 私は、何もいたしておりませぬ」 「何じゃ...」 ここで、仲間をよぶことは、できません。 80029022 「母よりさきに、このよをさるとは、 おやふこうな息子です...」 「光太郎を殺した犯人が誰なのか、 私は、しりたくもありませぬ」 ý ý 8202 「私には、何もわかりませぬ」 ý 9402 「おたみが、殺されるなぞ、 おもっていぬことでした... 人のうんめいなど、わからぬものです...」 9101 「死んでしまった者のことを、いまさら話して、 何になりましょうか...」 「お話しすることは、何もございませぬ」 ý c202 「殺されるようなことをする男だったので ございましょう。麗子も、そんな男と 結婚しななくて、よろしゅうございました」 ý ý 「おたみが、殺されるとは... そのことについては、何ももうしあげることは、 ございません...」 ý ý 8102 「あれは、気のつよい嫁でございまする。 光太郎がこうなってしまったのも、 もしかすると、あれのせいかもしれませぬね...」 ý ý 「...」 ý ý 9104 「影次郎は、くちは悪いですが、 こころのそこでは、兄の死をかなしんで、 おりまするでしょう」 「影次郎は、ちいさいときから、 いつも、兄に、めいわくばかりかけておりました」 ý 「お話することは、何もありませぬ」 ý ý 「光彦のこえは、光太郎のこえに、 とても、よくにておりまする」 ý ý 「お話することは、ありませぬ」 ý ý 「ちかごろは、こえも、ききませぬ」 ý ý 「絹代も、すっかり、娘らしくなっておりましょう。 この目さえみえれば、そのすがたをみることが できまするのに...」 ý ý 810a 「光一郎は、私のひまごで ございまする」 ý ý 「麗子は、もうすぐ、嫁にいくと、 もうしておりました」 ý ý 「その男の こえは、私のみみには、 にごってきこえまする」 ý ý 910d 「竜野は、りつさんと、 ずいぶん、したしいそうでございまする...」 ý ý 810e 「おたみは、私にとっては、家族も どうぜんの人間でございまする」 ý ý 「お話することは、ございませぬ」 ý ý 「私は、山神光太郎の母でございまする。 あの、仮装舞踏会とかいうももの時には、 ずっと、この部屋におりました」 b202 「私には、何もみえませぬ」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý a402 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý 「いまの山神家の財産は、 光太郎がつくりあげたものでございます。 ですから、私には、なんの関係もございませぬ」 ý ý 「このとしよりには、この家の者たちについて、 何もいうことは、ございません」 ý ý b402 「何のことで、ございましょうか...」 ý ý 「何も、ぞんじません...」 ý ý 「私は、そのようなものには、でておりませぬ」 ý ý 9128 「私は、むかしの人間でございますから、 このようなハイカラな屋敷は、すきではありませぬ」 ý ý a202 「光太郎は、私の息子です。 それに、なんのまちがいも、ございません...」 ý ý 80109024 「私は、このとおり、目がふじゆうでございまする。 ですから、光太郎を殺した犯人を みることもできませぬ」 ý 「あなたさまに、もうしあげることは、 何もございませぬ...」 9126 「いえ、べつに...」 9202 「あなたが、ここにきてから、ろくなことは、 おこりませぬ...」 9222 「円陣さんと、おっしゃいましたね。 探偵という仕事は、あばかなくともよい 秘密を、あばきたてるものでございますね」 8402 「お話することなど、何もありませぬ」 942a 「.....」 「ほかには、誰もおりませぬ」 龍之介は、サダをよんだ。 「何で、ございまする?」 龍之介は、サダの手をひいてつれてきた。 「何でございまする?」 サダは、じぶんの部屋にもどった。 841c 「なにも、ございませぬ...」 ý ý 「...」 ý ý 「...」 ý ý 「私には、なにも、みえませぬ」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý 8815b815 「おこたえすることは、何もございませぬ」 8816b816 「影次郎を、あんな人間にそだてたのは、 この私でございまする」 8817b817 「私のつみで、ございまする」 9815c815 「しりませぬ...」 9816c816 「それは...」 9817c817 「.....」 a815d815 「.....」 a816d816 「光太郎は、私に、たすけをもとめてきたので ございまする...」 a817d817 「それは....」 8818 「円陣さんと、おっしゃいましたね...」 「あなたには、きっと、すべてが、おわかりになって いるのでしょう...」 8819 「影次郎は、もう、きっと、あなたさまに、 ほんとうのことを、お話したのでございましょう..」 880c そこには、影次郎がいた。 「....」 影次郎は、なにもいわず、龍之介をみていた。 8017 「おい! そんなところで、何をしている?」 とつぜん、部屋の中に、めつきの悪い男が はいってきた。それは、山神影次郎であった。 「何か、用か...」 影次郎は、龍之介をにらみつけたように いった。 「何の用だ?」 龍之介の前に、影次郎がでてきた。 ý ý ý ý 「すこし、話をうかがいたいのですが...」 「何だ?」 龍之介は、影次郎に話をきくことにした。 「この部屋を調べたいのですが」 「かってにしろ!」 「ことわる!」 影次郎は、おこったようにこたえた。 「なにをいってる? ここは現場なんぞではない!」 「しつれいなやつだ。わしは、犯人ではない。 尋問などされるすじあいはない」 8430 「かえれ!」 影次郎は、龍之介を部屋から おいだした。 ここで、仲間をよぶことはできません。 8003a022 「ふん! 事件のことなど、おまえに、 話すことなど何もない。はっきりといっておくが、 わしは、事件には、何も関係ないからな!」 「兄さんが、あんな舞踏会など ひらくから、あんな事件がおきたんだ」 ý ý 8203 「まさか、あの男が、殺されるとはな。 麗子もかわいそうだが、まだ結婚前でよかった」 ý 9403 「わしは、何もしらんな」 a101 「兄さんとは、まあ、いろいろとあったが、 死んでしまえば、それも、みんな、おもいでだ」 ý ý 「まさか、あいつが殺されるとは、思わなかったよ」 ý ý a403 「おたみまでが殺されるとは...」 ý ý 「りつさんも、わがままな 兄さんが、 死んで、あんがい、ほっとしているのじゃないかね。 ははは!」 ý ý 8103 「あの人が何をかんがえているのか、 わしには、わからん...」 ý ý 「わしじゃ」 ý ý 8105 「冴子は、くちは わるいが、 あれで、こころのおくそこは、やさしい女だ」 ý ý 9106 「光彦も、話のわかる男になった。 きっと、山神貿易を、りっぱにまもるだろう」 ý ý 「雪江さんは、うつくしい。 じつに、うつくしい人だ」 ý ý 「光夫は、すっかり、なまいきになって... 兄さんも、あいつには、手をやいていたよ」 ý ý 「絹代も、すっかりませて、 かわいくない娘になりおった」 ý ý 「あかんぼうは、にがてだ。 光一郎は、わしが だくと、すぐになきよる」 ý ý 910b 「わしの娘だ。麗子は、びじんであたまもいい。 わしの じまんの娘だ。あはは」 ý ý 910c 「麗子が、どうしても、あの男と結婚すると いうのだ。麗子がそういうのなら、わしが、 はんたいすることも、あるまい」 「わしは、あの男とは、気があわん!」 「竜野のやつめ、何かたくらんでおるな」 ý 910e 「おたみは、わしが こどものころから、 山神家で、はたらいている女中だ」 ý ý 「女中だ」 ý ý 「私は、山神光太郎の弟だ。 わしは、舞踏会の時には、ドラキュラの仮装を した。ほら、あかい ちをすう、あのドラキュラだ」 c203 「なんだ、それは? わしは、なにもしらん!」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý b203 「わしは、金なんて、かりてない!」 ý ý 「わしは、何もしらん!」 ý ý b403 「な、なにも、しらんぞ!」 ý ý 「わしには、この家の財産を相続する けんりがある」 ý ý 「いまは、ちょっと、きゅうぎょう中だが、 チャンスさえあれば、わしも、まだまだ、 げんえきで、がんばれるぞ」 ý ý 「冴子との結婚に、母は、はんたいしていたが それも、いまとなっては、むかしの話だ」 ý ý 「わしと冴子は、仲のいい夫婦だ。 にいさんのところとちがってな。ははは」 ý ý 「はて、なんのことだ?」 ý ý 「わしは、何もしらん」 ý ý 「まったく、兄さんは、何を思って、 あの舞踏会をやったのだろう」 ý ý 「借金だと? しつれいなやつだな。 この山神影次郎、人に借金だけは、 したことはない」 ý ý a128 「わしは、兄さんが、こんな洋館をたてることには はんたいだった」 ý ý a203 「ああ、そうだ。兄さんとわしは、母親がちがう 兄弟だ。それがどうした...」 ý ý 9010a024 「わしは、探偵と けいさつは、だいきらいなんだ。 さっさと、ここからでていってくれ」 ý 「竜野が、おまえのことを、 うでききの探偵だといっていたが、ほんとうか? どうみても、わしには、おまえのような男に、 事件がかいけつできるとは、思わんがな...」 a126 「さっさと、捜査をして、さっさと、犯人を みつけろ。それが、できないのなら、さっさと、 この屋敷から、でていけ」 9203820d 「さっさと、犯人をつかまえろ!」 a222821b 「わしは、ぜったいに、犯人ではない!」 8403 「おまえに、話すことなんか、なにもない!」 a42a 「わしは、わるくないんだ...」 「ほかには、誰もおらん!」 龍之介は、影次郎をよんだ。 「何だ?」 「何だ?」 影次郎は、部屋にもどった。 941c8809 「わしは、何も、しらん!」 「そ、それは...」 ý 921e 「...」 「わしは、いつだって、兄さんとくらべられつづけて おった...」 ý 「...」 「わしは、いつも、兄さんの影じゃったんだ」 ý 8811 「わしは、なにも、しらん!」 ý ý 9811 「兄さんは、わしや光彦には、遺産を ゆずる気は、なかったのだ...なんでも、ぜんぶ じぶんのものだと思っているんだ」 ý ý e21da811 「うっ.....」 ý ý 「わしは、しらん」 ý ý 「それは...」 ý ý 「....」 ý ý ý ý ý 「ぐっ!」 ý ý ý ý ý ý ý ý e21fb811 「兄さんを殺したのは、わしじゃない」 8812b812 「おたみは、わしが、享平を殺したことに 気がついて、おった...そして、わしに、じしゅしろ といってきたのだ...」 8813b813 「みんな、いつだって、わしが悪いと思ってるんだ」 c811 「....」 9812c812 「おたみを、殺す気なんかは、なかったんだ」 9813c813 「おどかすつもりで、もってきたナイフで、 まちがって、おたみをさしたんだ...」 d811 「....」 a812d812 「兄さんは、舞踏会のときに、わしにいった。 この秘密の迷路に、遺言状をかくしたと.. わしは、まいばん、この迷路の中をさがして、 ようやく、あの遺言状をみつけたんだ」 a813d813 「兄さんは、あのあかんぼうに、遺産をゆずることにしていたんだ...」 8814 「わしは...わしは...光一郎を、さらって、 このまま、ここで死のうと、思っていたのだ。 でも、死ねなかった...」 「あの仮装舞踏会の夜、わしは、兄さんに かりていた金のことで、話をした。麗子の結婚 じゅんびのために、金をかえすのを、もうすこしまって ほしいとたのんだのだ...」 「でも、兄さんは、わしの話をさいごまで、きこうと しなかった。いつも、そうなのだ。兄さんは、わしの やることに、いつだって、はんたいするんだ。そして、 みんなも、わしの話をきこうとしないんだ!」 「兄さんが死んだあと、あの享平は、わしや 光彦のよわみをにぎって、わしたちに殺しの動機 があるといって、おどしてきた。わしは、あんな男の ところに、麗子を嫁にやりたくなかった...」 「そうだ、氷沼享平を殺したのは、このわしだ。 そして、おたみを殺したのも... だが、兄さんを殺したのは、わしじゃない。 ほんとうだ...兄さんを殺したのは...」 「そうなんだ...兄さんを殺したのは... 山神光太郎を、殺したのは、... あの人なんだ...」 「私に何か、ご用?」 そこには、山神冴子がいた。 「何かごようかしら?」 冴子が、でてきた。 ý ý ý ý 「ちょっと、よろしいですか?」 「なにかしら?」 龍之介は、冴子に話をきくことにした。 「この部屋を調べたいのですが」 「かってにすればいいわ...」 「ここを調べても、何もでてきませんわ」 「この部屋で、事件はおきていませんわ」 「私は、尋問されることなどしていませんわ」 ここで、仲間をよぶことはできません。 8004b022 「まあ、あなた、私をうたがうおつもり?! お兄さまの事件に、私は、なんのかかわりも ありませんわ。ですから、お話することなんて、 何も、ありません」 「私は、ほんとうに、何もしらないわ」 ý ý 8204 「いったい、誰が享平さんを殺したのでしょか? 麗子が、かわいそうで...享平さんは、麗子 をしあわせにしてくれると、思っていましたのに」 ý 9404 「おたみが殺されるなんて...」 「お兄さまは、なにごとにも きびしい人でしたわ。 仕事だけでなく、家族の者にもね」 ý ý 「享平さんは、私のことを、この家の人たちの ように、けいべつしたりしませんでしたわ」 ý ý 「おたみがころされるなんて...」 ý ý 9102 「おねえさまは、私のことを、きっと、 きらってらっしゃるでしょうね」 e41d 「こんどの事件で、私も、おねえさまのくろうが、 やっとわかったような気がしますわ...」 ý 9103 「お母さまは、はっきりした ご性格ですの。 うちの主人が、がんこなのも、あんがい あのお母さまに、にたのかもしれませんわね」 e41d 「お母さまは、むかしから、できのわるい 主人をいつも、かばってきてくれたそうです..」 ý 「かせぎの悪い男と結婚した女ほど、 ふこうな女はいませんわ...」 「主人は、なにかしたのでしょうか...?」 ý 「私ですわ」 ý ý 「光彦さんは、お兄さまには、すこしもにていない ようですわね」 ý ý 「雪江さんは、いつも ぼーっとしていらして... ほんとうに、おじょうさまそだちは、 おきらくで、うらやましいことですわ」 ý ý 「光夫さんとは、めったに話はしませんから」 ý ý 8109 「絹代ちゃんも、だんだん、お母さんに にてきたようですわね」 ý ý 「あのあかんぼうが、ゆくゆくは、 この山神家のあととりに なるのでしょうね」 ý ý a10b 「私のひとり娘ですの。私は、麗子にだけは、 しあわせな結婚をしてもらいたいと思ってますの」 ý ý a10c 「麗子の婚約者ですわ。享平さんは、 さいのうもあるらしいし、いえがらもいいそうですわ。 麗子を、しあわせにしてくれるといいのですが」 ý ý a10d 「まったく、竜野ったら、執事のぶんざいで まるで、この家の中のことを、なにもかも とりしきっているような かおをしているんですのよ」 ý ý 「うちの女中ですわ」 ý ý 「女中です」 ý ý 「私は、山神影次郎の妻ですわ。 私、舞踏会の時は、クレオパトラの仮装を いたしましたのよ。えっ、私にぴったりですって? まあ、いやだわ。ホホホ!」 ...まいるな... c204 「それは、私のものでは、ありませんわ。 主人のものだと思います」 ý ý ý ý ý b404 「それは、主人が、ベッドをしゅうりするために 物置から、もってきていたものですわ。 それが、どうかいたしまして?」 ý ý 「何も、しりませんわ」 ý ý ý ý ý ý ý ý a404 「まあ、りっぱなダイヤですこと。 えっ、おたみが、こんなものをもっていたなんて、 信じられませんわ」 ý ý 「私は、何もしりませんわ」 ý ý ý ý ý ý ý ý 「もちろん、私たちだって、 遺産相続のけんりは、ありますわよね」 ý ý 「私は、のぞまれて、主人と結婚しましたの。 でも、この家にとっては、のぞまれない嫁だった のかもしれませんわね」 ý ý a204 「ろくに はたらきのない夫でも、それなりの愛情は ありますわ...」 ý ý 「お兄さまが病気だったですって? まさか、とても、そんなふうには、みえませんでしたわ」 ý ý ý ý ý 「お兄さまは、どうして、死神なんかの仮装を されたのかしら?」 ý ý 「私たち夫婦も、この家にすまわせてもらっている おかげで、たにんに、借金をすることだけは、 ありませんわ。山神家の はじになることだけは、 したくありませんもの」 b204 「たしかに、主人は、お金にいつもこまっていますが でも、まさか、そのために、人を殺すようなことは、 いたしませんわ」 ý b128 「この屋敷のかぐは、すべて、 お兄さまが、おしごとで、がいこくにいかれたときに、 かってこられたものですのよ」 ý ý b0248014 「ねえ、事件の捜査のほうは、すすんでますの? ねえ、どうですの? ねえ?...」 ...ずいぶん、しつこく、きいてくるな... ý 「何か、わかりまして?」 b126 「円陣さん、はやく犯人をつかまえてくださいね。 事件がかいけつしないことには、遺産相続も うまくいかないでしょうからね」 9204 「麗子には、しあわせになってもらいたいと おもっていたのに....」 b222 「円陣さん、麗子のためにも、はやく犯人を みつけてください」 8404 「べつに、何もありません」 b42a 「円陣さん、あの...主人は、いったい、何を したのでしょうか?」 部屋の中には、冴子だけだった。 龍之介は、冴子をよんだ。 「何かしら?」 「誰だね、きみは...そうだった、たしか、探偵の 円陣くんだったね...」 そこには、山神光彦がいた。 「何だ?」 そこには、光彦がいた。 「きみか...」 ドアをあけると、光彦のすがたがあった。 ý ý ý 「すこし、話をきかせてください」 「ああ...」 龍之介は、光彦に話をきくことにした。 「もう、きみには、すべて話したはずだ」 「この部屋を調べたいのですが」 「すきに、したまえ...」 「ここを調べたいのですが...」 「こんなところを、調べてもしょうがないだろう」 「何をいっているのだ。ここは、現場ではない」 「現場をしらべさせてください」 「わかった..」 おたみは、この部屋で、誰かと話をして いたのだろうか?... 現場には、何ものこっていない... とくにかわったことは、何もない... 「きみに、尋問などされるおぼえはない」 「なんだ...」 「もう、話すことはない」 ここで、仲間をよんぶことは、できません。 8005c022 「父が、あんな死にかたをするなどと、 思ってもいないことだった。ふこうな事件だった」 「事件について、きみに話すようなことは、 何もないよ」 ý ý 8205 「まったく、こまったことになったよ」 ý 9405 「信じられないことだ、おたみまで、 殺されるなんて...」 b101 「父のことは、そんけいしていたよ。 山神光太郎は、せけんからみとめられた りっぱな事業家だった。山神貿易を いちだいで、ここまで、おおきくしたのだからな」 ý ý c205 「まさか、あいつが殺されるとは、 思ってもいなかった」 ý ý 「あんなとしよりを殺して、 いったい何になるというのか...」 ý ý a102 「母は、ほんとうに、しっかりものだよ。 父が殺されたというのに、すこしも、どうようして いないようだ」 ý ý 「そういえば、父が、おばあさまと、話をしている ところなど、めったにみたことが、なかったな」 ý ý a104 「おじさんは、父とちがって、仕事ができる人では ないが、あれで、けっこう、やさしいところのある人だ」 ý ý 「おばさんは、きさくで、いい人だ。母は、いまだに おばさんが、げいしゃだったということが、気にいらない らしいが、そんなことは、どうでも、いいことじゃないか」 ý ý 「私だ」 ý ý 8107 「雪江は、私のじまんの妻だよ」 ý ý 9108 「光夫は、私の話など、きこうともしない」 ý ý 「絹代を、きちんとしたところに、とつがせるのが、 私のせきにんだと、思っている」 ý ý 910a 「光一郎がうまれて、じぶんの子供というのが、 どれほど かわいいものか、よくわかった気がするよ」 ý ý 「麗子ちゃんも、あんなに、おじさんのことを きらわなくても、いいものだと思うが、どうしても、 おじさんとは、いっしょにくらしたくないらしいな」 ý ý b10c 「氷沼は、私の がくせいじだいの、ゆうじんだ。 あいつは、むかしから、あそびじょうずで、なかなか、 おもしろい男だよ」 ý ý 「竜野は、私のすることに、なんでも はんたいする。ちかごろは、山神貿易のことにまで くちを、はさむようになって、こまったものだ」 ý ý 「私が生まれる前から、この家で はたらいている人間には、よわいね」 ý ý 「あまり、話をしたことはないな」 ý ý 「私は、山神光太郎の長男だ。 舞踏会の時は、狼男の仮装をしたよ」 「私は、何もしらない」 ý ý ý ý ý a405 「これがどうしたというんだね」 ý ý 「私は、し、しらない...」 ý ý 「それが、どうしたんだね」 ý ý 「何も、わからんよ」 ý ý ý ý ý 「ほう、父に、金をかりていた人間がいたとは。 父は、金にも、きびしい男だったから、たとえ、 みうちであろうと、そういうものをかかせて、いたよ」 ý ý 「私は、何もしらない」 ý ý b405 「それは、竜野のものじゃないのか」 ý ý 「父が、相続人をはっぴょうしないまま、 死んでしまったからには、とうぜん、父の財産は 長男であるこの私が、ひきつぐことになるだろう」 ý ý 「私は、山神貿易のせんむだ。 いや、これからは、社長だ。ははは!」 ý ý 「ああ、雪江との結婚は、父がきめたものだ。 でも、私は、それにふまんはない」 ý ý a205 「私と雪江は、仲がいい」 ý ý 「私は、何もしらないな」 ý ý 「なんのことだ?」 ý ý 8110 「父が、どうして、あんな仮装舞踏会を ひらこうとしたのか、私には、まったくわからない」 b205 「父は、なぜ、死神の仮装などしたんだろう」 ý 「きみは、どうして、そんなことを、私にきくのかね」 「私は、借金なんて、していないぞ!」 ý c128 「この伝説館は、父のどうらくで、 たてられたようなものだ。ひろすぎで、むだがおおい。 私は、この家をうりはらって、べつの家にすんでも かまわないと思っているよ」 ý ý 「何の話だ? 私は、何もしらない」 ý ý c024 「父がいなくなったからには、これから、 山神貿易をしょってたつのは、この私だ。 おかげで、仕事のほうが、いそがしくなりそうだよ」 ý 「じつは、いま、影次郎おじさんと、 これからのことについて、話していたところなんだ」 9110c126 「ああ、そうだ...もしも、きみが、この事件を かいけつするのが、むりだと思ったら、えんりょせずに そういってくれ。そのときは、けいさつにたのむから、 捜査をきりあげても、かまわんよ」 9205 「話すことなど、なにも、ないよ」 c222821a 「...」 8405 「何もいうことは、ないよ」 8421 「私は、犯人じゃない!」 「私だけだ」 龍之介は、光彦をよんだ。 「何だ?」 「何だ?」 光彦は、部屋にもどった。 f21d 「何をいいだすのかね。私は、犯人ではない」 9421 「そ、それは...」 8422 「私は、なにも...」 821e 「何の話だ...」 a421 「何も、みてないといっているだろう!」 9422 「そ、それは...」 「私が、何をかくしているというのかね」 b421 「何の話だ?」 a422 「私は、かいしゃの金をつかいこんでいるんだ... 舞踏会の夜、父とそのことでもめたのは、 ほんとうだ...でも、犯人は、私ではない」 「そんなものは、私は、しらない」 ý ý ý ý ý ý ý ý 「そ、それは...」 ý ý 「たしかに、それは、私がもちこんだものだ。 しかし、私は、どくなど、いれていない!!」 f421 「きっと、犯人は、それに、どくをいれたんだ..」 ý 「私は、何もしらない」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý f21f 「しつれいなやつだ。私は、何もしていない」 c421 「なにを、いっているんだ...」 b422 「そ、それは...」 「私ではない...」 d421 「ちがうといっているだろう!」 c422 「享平は、私が、父にないしょで、 かいしゃの金をつかいこんで、いたのをしっていたのだ」 「私は、事件には、関係ない!」 e421 「....」 d422 「私は、きいてしまったんだ...父と母の話を」 8406840794128423f41ce424 「ち、ちがうんだ...」 光彦は、ついに、真実をかたりはじめた。 「私は、あの舞踏会のまえの日、父と母が、 いいあらそっているところをみたんだ。母は、父に こういっていた...あなた、やめてください。 そんなことをすれば、死ぬことになると...」 「私は、その母のことばが気になって、しかたが なかった。そして、あの仮装舞踏会の 事件がおきた...私は、なぜか、気になって、 事件のあと、家の中をしらべてみた」 「すると、倉庫に、あのワインがあった。 私は、そのワインを手にもった。そのとき、 誰かが、倉庫のドアのところにたっているのに きがついた。それで、私は、あわてて、でていった」 「あの手袋は、そのときおとしたものだ。ほんとうだ しんじてくれ。私は、何もしていない...」 「たしかに、あのワインは、私が父におくった ものだが、ほんとうに、私は、父を殺してなど いない...ほんとうなんだ...」 8116 「何をしてらっしゃるの?」 とつぜん、龍之介のうしろで、こえがした。 そこには、雪江がたっていた。 「ごきげんよう...」 そこには、山神雪江がいた。 ...ぬけるように、しろいはだの人だ... 「ごきげんよう...」 そこには、雪江がいた。 ý ý ý ý 「お話をうかがいたいのですが...」 「はい...」 龍之介は、雪江に話をきくことにした。 「私は、すべてお話しいたしましたわ」 「ここを調べたいのですが」 「わかりましたわ...どうぞ」 「ここを調べたいのですが」 「おことわりしますわ...」 「ここで、事件は、おきておりませんわ...」 「尋問? 私は、何もいたしておりません...」 ý 「すべて、もうお話いたしましたわ」 ここで、仲間をよぶことはできません。 8006d022 「お父さまがなくなられてから、 この家の人たちは、誰もかれも、じぶんのことだけが たいせつなようですわね...」 「お話することは、何もありません...」 ý ý 8206 「あのかたが殺されるなんて...」 ý 「おたみさんは、どうして殺されたのでしょう?」 「お父さまは、この屋敷の中では、おおさまの ようなかたでした。お父さまにさからう人間なんて ここには、誰もいませんでしたもの...」 ý ý c206 「享平さんが、殺されたなんて...」 ý ý 「おたみさんは、犯人を しっていたのでしょうか?」 ý ý 「お母さまは、いつも、お父さまのことを、 いちばんに、かんがえてらっしゃいましたわ」 ý ý 「おばあさまは、めったに、お部屋から でていらっしゃいませんわ」 ý ý b1049130 「おじさまのことは、 あまり、お話したくはありません...」 ý ý 「おばさまとは、あまり、お話があいませんの」 ý ý a106a130 「光彦さんは、お父さまがなくなられてから、 人がかわってしまったようで...」 ý ý 「私ですわ」 ý ý 「光夫さんは、私のことを けいべつしてらっしゃる ようですわ...光夫さんにいわせれば、私は、 この家にかざられている、にんぎょうのようなもの だそうですわ...」 ý ý 「絹代さんは、光一郎をかわいがって くれますの」 ý ý a10ab130 「私の息子です。あの子だけが、私の いきがいですわ...」 ý ý 「麗子さんとは、あまりお話しませんの」 ý ý c10cc130 「あのかたは、この家にいつも いりびたりですの」 ý ý 「執事ですわ」 ý ý 「女中ですわ」 ý ý 810fd130 「光一郎は、あの子にだけは、 ひとみしりしませんの。きっと、あの子は、 ほんとうに、子供がすきなのですね」 ý ý 「私は、山神光彦の妻ですわ。 舞踏会のときには、私は、しらゆきひめの 仮装していましたわ」 「私には、なにもわかりませんの」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý b206 「私は...しりません...」 「そ、それは...」 ý 「何も、しりません」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý 「私には、お父さまの遺産のことなど、 なんの関係もありませんの」 ý ý 「私は、この家に、金のかわりに、 うられてきたような人間です...」 ý ý a206 「光彦さんと私は、光一郎の親なんです。 あの子のためにも、夫婦仲よくしなくては、 いけませんわね...」 ý ý 「私には、何もわかりません」 ý ý ý ý ý 「お父さまが、なぜ、あんな舞踏会などを ひらかれたのか、私には、わかりませんわ...」 ý ý 「私は、借金のために、 この家に嫁にきたような女ですわ...」 ý ý d128 「この家の中には、ぜいたくなものが、たくさん おいてありますが、でも、そこにすんでいる人たちの こころは、すこしも、ゆたかではありませんわ...」 ý ý c010d024 「円陣さん、お父さまを殺した犯人は、 きっと、この家の中にいますわ...でも、私には それが誰なのか、そうぞうもつかないことですわ」 ý 「こうして、屋敷のそとにでると、 すこしは、きぶんが、はれますわわね...ふう..」 ...ためいきが、にあう人だな... 811ed1268130d128 「円陣さん、へいきで、人を殺すことができる 人間と、おなじやねの下にいることは、 つらいことですわね...」 9206 「いいえ、べつに...」 d222 「私は、事件のうらに、ある真実を、 しることが、こわいような気がいたしますわ...」 「あなたに、おきかせする話は、何もありません」 ý 「私、ひとりですわ」 龍之介は、雪江をよんだ。 「何でしょうか?」 8426 「円陣さん、じつは、さきほど、めずらしく 影次郎おじさまが、光一郎をだいて、 そのまま、部屋からでていかれて... どこに、つれていかれたのでしょうか?」 龍之介は、客室に、雪江をよんだ。 「何でしょうか?」 f21e 雪江は、部屋をでていった。 821d 「私は、何も、ぞんじません...」 a21e 「.....」 821f 「そ、それは...」 921d 「何も、みてはおりません...」 b21e 「.....」 921f 「なにも...」 a21d 「かくしていることなど、ありませんわ...」 c21e 「....」 a21f 「享平さんは...」 「私は、何もしりませんわ」 ý ý ý ý ý 「そんなものは、しりませんわ」 ý ý ý ý ý 「...」 ý ý 「そ、それは...私が、おとしたものですわ」 ý ý 「私のものでは、ありません」 ý ý 「私は、何もしりません」 ý ý ý ý ý ý ý ý b21d 「誰も、かばってはいませんわ...」 d21e 「....」 b21f 「光彦さんは...」 c21d 「私は、何もしりません...」 e21e 「....」 c21f 「享平さんは、いったのです。犯人を しっていると...」 d21d 「私は、何も...」 「そ、それは....」 d21f 「享平さんは、私に...」 8220 「そうです...私は、あの氷沼享平に おどかさておりました...」 雪江は、ふるえるこえで、ついにそういった。 「氷沼享平は、お父さまの事件がおこった すぐあとに、私をよびだして、こういったのです。 ...俺は、山神光太郎を殺した犯人を しっていて、その証拠をにぎっていると...」 「享平さんは、その犯人は、あんたにとって、 たいせつな人だといいました。私は、それは、きっと それは...光彦さんのことだと思いました..」 「たしかに光彦さんとの結婚に、私はしあわせ をかんじることはできませんでした。でも、光彦さんは 光一郎の父親なのです。私は、あの子を 犯罪者の子供にしたくは、ありませんでした」 「享平さんは、光彦さんのことを、あなたに ばらされたくなかったら、じぶんのいうことをきけと いいました。きのうの夜、中庭のふんすいのところ に、まっているように、いわれたのです」 8228 「でも、享平さんは、中庭には、やってきません でした。そして、殺されたのです...円陣さん、 私のしっていることは、それだけなのです。 ...ほんとうですわ...それだけなのです...」 802881148115 「そこで、何をしているのですか?」 とつぜん、部屋の中に誰かが はいってきた。 それは、山神光夫であった。 81118112 「あ、そうだ...ちょっと、ぼくは、 用事を思いだしました。でかけます...」 そういって光夫は、とつぜん部屋をでていった。 「なんでしょうか?」 そこにいたのは、山神光夫であった。 「ぼくに、何か用ですか?」 「あなたでしたか...」 そこには、光夫がいた。 ý ý ý 「ちょっと、話をきいてもいいですか?」 「何でしょうか...」 龍之介は、光夫に話をきくことにした。 「もう、なにもいうことは、ありません」 「わかりました。 あなたが気のすむまで調べてください」 「おことわりしますね。ぼくは犯人じゃありません」 「ここは、現場ではありませんよ」 「おことわりします」 「な、なんですか?」 「すべて、はなしたはずです」 ここで、仲間をよぶことはできません。 8007e022 「父を殺したのは、ぼくではありません」 ...やけに、おちついたこえで、こたえるな... 「ぼくは、何もしりません...」 ý ý 「あの男は、きっと、犯人をしっていたのです」 ý ý 「おたみまでがころされるなんて...」 ý ý ý 「父は、事業家としては、りっぱな男だったかも しれませんが、父親としては、さいていの人でした」 ý ý 「あの人が、しょうせつかだということが うそだったことぐらい、ぼくにだって、わかっていました」 ý ý 「おたみは、この家のことをなんでもしって いました」 ý ý 「母は、かわいそうな人です。いつも、 わがままな父の いいなりでしたからね」 ý ý a103 「おばあさまは、この家で何がおきても、 いつも、しらないふりをするんだ」 ý ý 「おじさんは、この家のやっかいものです。 おじさんは、父のおかげで、くらしているような ものです」 ý ý 9105 「あのおばさんは、いつだって、じぶんのことばかり かんがえている人ですよ」 ý ý b106 「兄さんは、父が死んだことを きっと、よろこんでいるのでしょうね...」 ý ý 9107 「あの人は、兄さんのことなど、すこしも愛して いませんよ」 ý ý 「...」 ý ý 「絹代は、はたらくということの いみもしらない わがままな いもうとです」 ý ý 「あかんぼうは、しあわせです。 まだ、なにも、しらなくてすむのですから」 ý ý 「麗子さんは、ぜいたくで、わがままな人だ。 この家をでていって、ほかでくらすなんて、むりですよ」 ý ý 「へんな男です。ぼくには、 あんな男と結婚する麗子さんのきもちが ぜんぜん、わかりませんね」 ý ý 「竜野のかんがえていることは、 いつも、せけんていばかりだ」 ý ý 「おたみは、ぼくのすることに、 もんくばかりいっていますよ」 ý ý 910f 「お春は、絹代とおなじ年なんです。 でも、絹代とちがって、いつも、いっしょうけんめいに はたらいています」 ý ý 「ぼくは、山神光太郎の次男です。 ぼくは、舞踏会のときには、ミイラ男の仮装を しました」 「ぼくの ものではありません」 ý ý ý ý ý 「何も、しりません」 ý ý 「そ、それは...」 ý ý 「ほくは...何も、しりません...」 ý ý 「ぼくのものでは、ありません」 ý ý ý ý ý 「ぼくには、なにも、わかりません」 ý ý ý ý ý ý ý ý 「どうせ ぼくは、いずれ、この家をでてゆく みです。 遺産相続なんて、ぼくには、関係ありません」 ý ý 「ぼくは、だいがくせいです」 ý ý 「そ、そんな人は、いませんよ」 光夫は、そういって、ぽっと、あかくなった。 ...あんがい、じゅんじょうなんだね... ý ý 「何のことでしょうか?」 ý ý ý ý ý a110 「あんな、ばかばかしいことをしたから、 父は、殺されたのですよ」 ý ý e128 「父が、こんな屋敷をたてたのも、じぶんのちからを みせたかったからでしょう。でも、きっと、 この屋敷も、父になかされた たくさんの人たちの ぎせいのうえにたっているんです」 ý ý 「ぼくには、何もわかりません」 ý ý 800f8028e024 「円陣さんでしたね...ぼくには、父を殺した 犯人が誰なのかが、わかっています。でも、それを あなたに話す気は、ありませんが」 ...ほう、そうか... ý 「べつに、話は何もありません」 b1108124e1268131 「ぼくは、かくしていることなんて、何も... 何も...ありませんからね」 ...ふーん、あやしい... 「べつに...」 「何もいうことは、ありません」 ý ý 部屋の中には、光夫ひとりだった。 「何ですか?」 龍之介は、光夫を、客室によびよせた。 「何でしょうか?」 「ちょっと、事件について、ききたいんだ」 f21b 光夫は、部屋からでていった。 8219 「ぼくは、何もしりませんね...」 a21a 「ぼくが、なにをかくしているというのですか?」 921b 「そ、それは...」 9219 「何も、みていませんよ...」 b21a 「うう...」 a21b 「父を殺したのは...」 a219 「かくしていることなど、なにもありませんね」 c21a 「ぼくは、なにも...」 b21b 「そ、それは...」 「ぼくは、なにも、しりません」 ý ý ý ý ý ý ý ý 912e 「そ、それは...」 光夫のかおいろが、いっしゅん、かわった。 f219 「それは、倉庫におちていたのです...」 ý 912f 「それが、父がのんだワインなのですか? どこに、あったのですか?」 e219 「そのワインは...」 ý 「ぼくは、しりません」 ý ý ý ý ý 「ぼくは、なにもしりません」 ý ý ý ý ý ý ý ý b219 「誰も、かばってなんていません...」 d21a 「ぼくは...」 c21b 「そ、それは...」 c219 「ぼくでは、ありません」 e21a 「し、しりません....」 d21b 「うっ...」 d219 「何も、しりません」 f21a 「.....」 e21b 「兄さんは...」 8224821c 「すみません...ぼくは、かくしていました...」 光夫は、そういって、真実を話しはじめた。 「ぼくは、父があのワインをのんで死ぬ前に 倉庫からでてくる光彦兄さんを、みました。 ぼくは、父が死んだあと、なぜか、そのことが 気になって、倉庫にいってみたのです」 「そうしたら、そこに、その夜、狼男の仮装を していた光彦兄さんのものだと思われる手袋が おちていたのです。そして、そのよこには、父がのんだ と思われる、あのワインのビンが...」 「ぼくは、そのとたん、光彦兄さんが、事件に 何か関係あると思ったのです。だから、 あの手袋を、ひろって、じぶんの部屋に かくしておいたのです...」 「円陣さん、ぼくは、わがままで、おうぼうな父を けいべつしていました。だから、ぼくは、いつも、父に はんこうばかりしていました...でも、ぼくは... 父が...すきでした...」 「きっと、光彦兄さんだって、ぼくとおなじきもちの はずです。だから、ぼくは...光彦兄さんが... 父を殺した犯人だとは、思いたくないのです。 円陣さん...そうですよね...」 「何かしら?」 そこには、山神絹代がいた。 「なあに?」 そこには、絹代がいた。 ý そこには、絹代がいた。 「わたし、ひとりでいるのがこわいの...だから、 お母さまのそばにきたの」 「円陣さんなの...」 そこには、絹代がいた。 ý 「ちょっと、話をきかせてくれるかな?」 「いいわよ」 龍之介は、絹代に話をきくことにした。 「この部屋を調べても、いいかな」 「わかったわ...いいわよ」 「この部屋を調べさせて、ほしいんだ」 「いやよ」 「ここは、現場なんかじゃなくてよ」 「尋問? わかんないわ」 ここで、仲間をよぶことはできません。 8008f022 「事件のことは、何も話したくないの... だって、お父さまの、あのすがたを、おもいだして しまうもの...」 「円陣さん、お父さまは、どうして殺されたの? わたしには、どうしても、わからないわ」 「お父さまを殺した犯人と、享平さんを 殺した人は、いっしょなの?」 ý 8208 「しんじられないの。この家の中で、また、事件が おこったなんて...わたし、こわい!」 ý 9408 「おたみが殺されるなんて...」 「お父さまは、わたしには、いつもやさしかったわ。 わたし、おとうさまが、だいすきだった...」 ý ý 8208 「ねえ、円陣さん...舞踏会の夜、 お父さまとお金のことで、いいあらそっていた人は、 氷沼さんじゃないと思うわ。あのこえは、 氷沼さんのこえでは、なかったもの」 ý ý 「ねえ、どうして、おたみは、殺されたの?」 ý ý 「私、お母さまのお体が、しんぱいなの」 ý ý 「おばあさまって、目がおわるいけれど、 この家のことは、なんでも、ごぞんじなのよ」 d425 「ねえ、おばあさまが、何かなさったの? おばあさまは、とても、かなしそうにしてらっしゃるわ」 ý 「お父さまは、おじさまのことが、おきらいだったわ」 ý ý a105 「おばさまは、いつも、お母さまの悪口ばかり おっしゃるのよ」 ý ý 「わたしのお兄さまよ」 ý ý a107 「雪江おねえさまは、いつも、ためいきばかり ついているの」 ý ý a108 「光夫兄さまは、すこし、かわっているのよ。 かつどうしゃしんっていうものを、つくる人に なりたいのですって。でも、お父さまは、はんたい してらしたわ」 b208 「円陣さん、光夫お兄さまが、なにかしたの? お兄さまは、とても、げんきがないの」 ý 「わたしよ」 ý ý 「あかちゃんて、かわいいわ。私も、いつか お嫁にいって、あんなあかちゃんを、うむのね」 ý ý b10b 「麗子さんが、結婚したいのは、 はやく、この家をでていきたいからなんですって」 ý ý 「氷沼さんは、しょうせつかだっていうけど、 私、あの人のかいた本をみたこともないわ」 ý ý 「執事よ」 ý ý a10e 「おたみったら、いつも、わたしにこういうのよ。 ...おじょうさま、もっとおしとやかにってね」 ý ý a10f 「ただの女中よ」 ý ý 「わたしは、山神光太郎の娘よ。 私、舞踏会のときは、かぐやひめの仮装を していたわ」 「わたしのもじゃないわ」 ý ý ý ý ý 「それが、どうかしたの?」 ý ý 「わたしには、何もわからないわ」 ý ý ý ý ý c208 「わたしのものじゃないわ。おかあさまが、まだ おけしょうは、だめだって、おっしゃるの」 ý ý a408 「それは、お母さまのものよ。お父さまが、 お仕事で、がいこくにいかれたとき、 お母さまに、おみやげにかってこられたものだわ」 ý ý 「わたしには、何もわかんないわ」 ý ý ý ý ý ý ý ý 「お父さまの遺産が誰のものになろうと、 わたしには関係ないわ。お母さまは、 わたしには、何のしんぱいもしないようにって、 おっしゃったもの」 ý ý 「わたし、じょがっこうに、かよっているの。 そつぎょうしたら、およめにいくの」 ý ý a208 「わたし、まだ、人をすきになったことが ないの。人を愛するって、どんなことなのかしら」 ý ý b408 「病気? 誰か、病気なの?」 ý ý 「わたしは、何もしらないわ」 ý ý 「私、あのときは、かぐやひめの仮装をしたの。 お父さまが、きれいだねってほめてくださったわ」 ý ý f128 「わたしのおともだちは、みんな、この洋館のことを、 あこがれてみているわ。わたしも、この屋敷が きにいってるわ」 ý ý 「なんのこと? 何もわからないわ」 ý ý b010f024 「わたしには、この家の中に、お父さまを殺した 犯人がいるなんて、しんじられないわ。でも... ううん...なんでもないわ...」 ý 「私...いえ、何でもないわ...」 8121f126 「あのね...じつは、わたし、きいてしまったのよ。 お父さまが、舞踏会の時に、誰かとお金の ことで、いいあらそっているのを...」 ...れいの借用書のことか... 9208 「ねえ、円陣さん、お父さまを殺した犯人を はやくつかまえて」 e222 「円陣さん、お母さまは、すっかりつかれて らっしゃるわ。このままでは、お母さまが病気に なってしまうわ。はやく、犯人をみつけて、 お母さまを、あんしんさせてあげて」 8408 「円陣さん、お母さまは、何もしていないわ。 お母さまをうたがったりしないでね」 c42a 「円陣さん、ほんとうの犯人は、誰なの?」 部屋の中には、絹代だけだった。 「何かしら?」 絹代があらわれた。 その部屋のすみには、 すやすやとねむる、光一郎のすがたがあった。 「あぶぶぶ...」 そのあかんぼうは、山神光一郎であった。 「......」 ý ý ý ý ...あかんぼうに、話をきいてもむだかな?... スヤスヤ...あかちゃんは、ねています。 ý ここは、現場ではありません。 あかちゃんは、犯人ではありません。 ここで、仲間をよんだりできません。 80098023 「あぶぶ...」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ...あかちゃんにきいても、わからないかな?... ý ý ý ý ý ý ý ý すやすや... ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý 「あぶぶ...」 ý ý ý ý ý ý ý ý このあかんぼうは、山神光彦と雪江の子供 です。舞踏会のときは、ここで、ねていました。 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ...スヤスヤ... あかちゃんは、きもちよさそうにねています。 8025 あかちゃんの ねがおは、かわいいものですね。 ý ý ý ý ý ý ý 部屋のおくには、 あかんぼうが、ねています。 「あぶぶ...」 ý 「誰なの?」 そこには、山神麗子がいた。 「私に、何かごよう?」 麗子が、でてきた。 ý ý ý ý 「お話をうかがいたいのですが...」 「なによ」 龍之介は、麗子に話をきくことにした。 「この部屋を調べたいのですが」 「どうぞ、おすきに」 「この部屋を調べたいのですが」 「おことわりするわ」 「ここは、現場じゃないわ」 「尋問なんてされるおぼえはないわ」 ここで、仲間をよぶことはできません。 800a9023 「事件のことなんてきかれても、こたえようがないわ。 ただ、びっくりしてるだけだわ。まさか、おじさまが 殺されるなんて、思ってもいなかったもの」 「さあ、私には、何もわからないわ」 ý ý 8209 「どうして、享平さんが、殺されなくちゃ いけないの...どうして...」 麗子のひとみには、なみだが、いっぱいだった。 ý 9409 「いったい、この家は、どうしてしまったの? おたみまでが、殺されるなんて...」 「おじさまって、人のきもちが、まったくわからない 人だったわ。じぶんが、ただしいと思うことは、 あいてにも、むりにおしつけるような人だったわ」 ý ý a209 「みんなは、あの人のこと、わるくいうけれど、 私は...享平さんのことを、 ほんとうに愛していたのよ...」 ý ý a409 「おたみは、誰に殺されたの?」 ý ý 「おばさまは、私たち家族のことを、きっと やっかいものだと思ってらっしゃるでしょうね」 ý ý b103 「おばあさまは、いつも、あのお部屋に こもりっきりよ」 ý ý 「父は、だめな人なの...」 f425 「円陣さん、父が、何かしたの?... 父は、いつも、そうなのよ。じぶんのことだけを かんがえて、まわりの人に、めいわくをかけるのよ」 ý 「私は、母のような人生だけは、 おくりたくないわ」 ý ý 「享平さんは、光彦さんのおともだちなの」 e422 「享平さんが、いっていたわ。光彦さんは、 山神貿易の金をつかいこんでいるって...」 ý b107 「私は、あの人みたいに、愛のない結婚は しないわ」 ý ý 「光夫さんて、かわってるの。でも、おじさまに、 いちばんにているわ」 ý ý 9109 「絹代ちゃんも、ちかごろは、 ずいぶんおとなになったわ。あんがい、いろんなことを みてるし、わかっているみたいね」 ý ý 「私、子供はきらいなの」 ý ý 「私よ」 ý ý d10c 「私の婚約者よ。かれは、しょうせつかなの。 フランスに りゅうがくしたことも、あるのよ」 ý ý 「私、あの男はきらいよ。だって、享平さんの ことを、きらっているのよ」 「竜野は、きっと、何かかくしているのよ」 ý 「おたみも、きっと、享平さんのことを よく、思っていないんだわ」 ý ý 「あの子、きっと、光夫さんがすきなのよ」 ý ý 「私は、山神影次郎の娘よ。 私、舞踏会のときには、マリー・アンワネットの 仮装をしたわ。ピンクのドレスをきたのよ」 「私は、何もしらないわ」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý 「私、ちょうど、客室の前をとおりかかったの。 そしたら、ドアがあいていて、誰かがたおれていたわ。 それが、おたみだったわ...ええ、そのときには、 誰も...みなかったわ」 ý ý 「おじさまが、誰を遺産相続人にしようと、 思っていたのかは、私には、わからないわ。でも、 きっと、私の父でないことだけは、たしかだわね」 ý ý 「私は、ピアノをおしえているの」 ý ý 「私は、母のような結婚はしたくないわ」 ý ý 「この家の中は、とても、ひえびえとしているの。 ここは、愛のない家族のあつまりなのよ」 ý ý b409 「何のことかしら?」 ý ý 「薬? 私には、何もわからないわ」 ý ý 「おじさまが、どうして、あんな舞踏会をひらこうと したのか、私には、わからないわ」 b209 「そういえば、享平さんは、あの舞踏会の時に おもしろい話をきいたと、いっていたわ。あれは、 なんのことだったのかしら?」 ý 「享平さんが、借金をしていないかですって? とんでもないわ。あの人は、そんな人でなくてよ」 c209 「享平さんは、おじさまに借金なんて、 していないわ。もし、おじさまに借金をしていると したら、それは、私の父よ」 ý 8129 「私は、1日もはやく、この家をででいきたいと 思っているわ」 ý ý a0109025 「ねえ、探偵さん、犯人のめぼしはついているの? まあ、とにかく、はやく犯人を、つかまえてね。 あなたが、犯人をつかまえてくれないと、私、 いつまでも、この家から、でていけないもの」 ý 「捜査は、すすんでいるの?」 8127 「円陣さん、もし、あなたが、享平さんを うたがっているのなら、それは、おおまちがいよ。 あの人は、そんなことのできる人じゃないわ」 9209 「いまは、何も話したくないわ...」 f222 「円陣さん、享平さんを殺した犯人を かならず、みつけてちょうだい。たとえ、それが 誰であったとしても、私は、おどろかないわ」 8409 「犯人は、この家の中にいるのよね」 d42a 「円陣さん、はやく、犯人をみつけてちょうだい。 そして、私に、真実をおしえて」 部屋の中には、麗子しかいません。 龍之介は、麗子をよんだ。 「何かしら?」 80168029 「そんなところで、何をしてるんだ?」 龍之介の前に、とつぜん、ひとりの男が あらわれた。それは、氷沼享平だった。 「それじゃ、俺は、ここからしつれいするぜ」 そういって、氷沼享平は、龍之介の前から すがたを けした。 「あんたか...」 そこには、氷沼享平がいた。 ý 「俺に、何かようかい?」 そこには、享平がいた。 ý ý ý 「ちょっと、話をきかせてください」 「何だ?」 龍之介は、享平に、話をきくことにした。 8015802c 「この部屋を調べたいのですが」 「かってにしろよ」 「この部屋を調べたいだと? ことわるね」 「おいおい、しっかりしろよ。 ここは、現場じゃねえよ」 「そんなものに、こたえる気はないね」 ここで、仲間をよぶことは、できません。 800ba023 「俺は、まえから、いつかこんなことが おこるんじゃないかと思ってたよ...ふふふ」 ...ぶきみな、わらいをうかべる男だ... 「ふふふ、犯人っていうのは、あんがい みじかにいるものさ」 ý ý c101 「山神さんが死んで、ほっとしている人間も、 この家の中にはいるだろうぜ。ふふふ」 ...ほう.... ý ý 「あの人は、俺のことが、お気にめさないようだ」 ý ý 「どうも、あのばあさんは、にがてだ」 ý ý c104 「麗子は、父親のことをきらってるよ。 あんな父親とは、さっさとおさらばしたいそうだぜ」 ý ý 「麗子のおふくろさんさ。どういうわけか、 俺は、あのおふくろさんの、おきにいりでな」 ý ý c106 「あいつは金のくろうもしらない、ただのぼっちゃんだ。 金は、どこからか、しぜんにわいてでてくるものだと 思っていやがる。まったく、のんきな男だ」 ý ý 「きれいな人だ。人の にょうぼでさえなければ、 おちかづきになりたいところだがな。ふふふ」 ý ý b108 「あいつは、まだ、よのなかのことなんて、 ちっとも、わかっちゃいねえよ」 ý ý 「金もちのわがままおじょうさんだ」 ý ý 「あんがい、あのあかんぼうは、金のスプーンを くわえていたりしてな...」 ý ý c10b 「麗子は、俺に、べたぼれだ。 まったく、男みょうりにつきるぜ。ふふふ」 ý ý 「俺だよ」 ý ý 「あの執事は、俺がこの家にでいりするのを とめたいらしいが、俺は、麗子の婚約者だ。 もう、山神家のいちいんのようなものだからな、 あいつに、もんくをいわれる、すじあいはないさ」 ý ý 「はばあには、きょうみねえよ」 ý ý 「がきに、手をだすほど、おちぶれちゃいねえよ」 ý ý 「俺は、山神麗子の婚約者だ。 さあ、舞踏会の時に、何をしていたかなんて、 もう、わすれちまったね」 「なんのことかね。俺には、さっぱり、わからんね」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý 「そりゃあ、この俺だって、山神光太郎の 財産のおこぼれを、ちょうだいしたいさ。ふふふ」 ý ý 「俺は、しょうせつかだ。こんど、この家のことを かいてみようかと思ってるところさ。この屋敷を ぶたいにすると、おもしろい話ができそうだぜ」 「俺のほんとの仕事がなんでも、 人にめいわくをかけるもんじゃねえことは、 たしかだ」 ý 「ああ、俺は、麗子と結婚するぜ」 ý ý 「俺は、てんがいこどくの みさ。もっとも、この家の れんちゅうみたいに、うそっぱちだらけの人間の あつまりなら、家族なんて、ないほうがましさ」 ý ý c110 「どういうわけか、この俺もしょうたいされていてな。 せっかくだから、アルセーヌ・ルパンの仮装で、 おじゃましたよ」 ý ý 811881229129 「借金? ざんねんながら、俺って男は、 いがいと金には、こまっていなかったりするんだな。 おまえ、俺が光太郎に、借金でもしてて やつを殺したとでも思ってるのか? ばかだな」 ý ý 「まったく、ここは りっぱなお屋敷だぜ。俺も はやく、こんな屋敷にすみたいもんだな」 ý ý 8015a025802a 「探偵さんよ、わるいが、犯人は俺じゃないぜ。 もっとも、この家の人間にとっちゃあ、この俺が 犯人だったりすると、ありがたいのかもしれんがな。 ふふふ...」 ý 「どうだ、事件の捜査は、すすんでいるかい? まあ、ぼちぼちとかんばれよな...」 d11091229127 「あんたも、仕事だから、しかたないだろうが、 人の秘密に、くびをつっこむと、ろくなけっかには ならんことは、たしかだ。しっかり、気をつけろよ」 ý ý ý ý 「ここには、俺、ひとりだ」 龍之介は、享平をよんだ。 「何だ?」 龍之介は、客室に、享平をよびだした。 「何だ?」 「じゃあな」 享平は、部屋からでていった。 「さあな」 ý ý 「俺が、何をみたっていうんだ?」 ý ý 「俺が、何をかくしてるって、いうんだ?」 ý ý 「俺は、なにも、しらんね」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý 912d 「それが、どうした? 俺は、なにもしらん」 ý ý ý ý ý ý ý ý 「この家の中の人間は、みんな、よくばりで じぶんかってなやつばかりさ。あの光太郎を 殺して、この家の財産を、じぶんのものに しようっていうやつは、おおぜいいるさ」 ý ý 「おい、円陣さんとやらよ。 これだけは、はっきりといわせて、もらうぜ。 あんたは、俺のことを犯人じゃないかと、 うたがっているようだが、とんでもない話だ」 ý ý 「もしも、あんたが、まぬけな探偵じゃ なかったら、まあ、しっかりと、この家の 人間たちのほんとのすがたをみることだな。 ふふふ...」 ý ý 「円陣くんか...」 そこには、竜野源蔵がいた。 「何か、用かね?」 竜野が、でてきた。 ý ý ý ý 「なんだね?」 龍之介は、竜野に話をきくことにした。 「この部屋を調べたいのですが」 「すきにしたまえ」 「ここを、調べるひつようなどないだろう」 「しっかりしたまえ、ここは、現場ではない」 「私に、尋問してどうする。 私は、捜査をたのんだ いらいしゃだぞ」 「....」 ここで、仲間をよぶことはできません。 800cb023 「私のしんぱいが、ついにげんじつになってしまった。 円陣くん、はやく、犯人を見つけてくれ。 けいさつの手が、この山神家にはいらぬうちに、 はやく、犯人をつきとめたいのだ」 「はやく、犯人をつかまえてくれ」 ý ý 820a 「まさか、あの男が殺されるとは...」 ý 940a 「円陣くん、いったい、これはどういうことだ。 きみがいながら、こんなことになるなんて... まったく、なんのために、きみをやとっていると 思っているのかね」 d101 「だんなさまは、人にかんしゃされこそすれ、 うらまれるような おかたではなかった。 きっと、こんどの事件は、だんなさまのことを ねたんだものの、しわざにちがいない」 ý ý a20a 「私は、てっきり、あの男が だんなさまのいのちを ねらった犯人かと思っていたが、そうでは なかったのか...」 ý ý a40a 「死んだ人間のことを、話しても、 いまさら、どうしようもないだろう」 ý ý 「おくさまは、だんなさまの、めいふくをいのられて、 しずかに、すごしていらっしゃる。おつかれになっていると 思うので、きみも、むりにお話をうかがったり しないように、たのむよ」 ý ý 「だんなさまの、お母さまである」 ý ý 「だんなさまの弟でらっしゃるが、それが、 だんなさまとは、おおちがいのおかたでな。 まったく、おなじご兄弟でも、これほどちがうとは ふしぎなものだな」 ý ý 「影次郎さまの、おくさまだ」 ý ý 「山神家のご長男だ。山神貿易の せんむでいらっしゃるが、だんなさまはが、 なくなられたうえは、いずれ、社長のざを つがれることだろう」 ý ý 「光彦さまの おくさまだ」 ý ý 「山神家のご次男で、だいがくに かよってらっしゃる」 ý ý 「いちばん、すえのおじょうさまだ」 ý ý 「光彦さまのご長男で、だんなさまにとっては、 はじめての おまごさんであった」 ý ý 「影次郎さまの一人娘で、ちかぢか ご結婚のごよていがある」 ý ý e10c 「麗子さまの、ご婚約者であるが、 だんなさまは、どうしても、そのことをみとめようとは、 なさらなかった。あのかたには、いろいろと もんだいがあるようだ...」 ý ý 「...」 ý ý b10e 「おおおくさまの、おせわをしている女中だ」 ý ý 「きょねんから、はたらきだしたばかりの女中だ」 ý ý 「私は、山神家の執事だ。 私は、舞踏会のときは、べんけいの仮装を して、しゅっせきした」 「私は、何もしらない」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý b40a 「そ、それは...」 ý ý 「だんなさまが、いったい、誰を相続人に しめいしようとおもってらしたのかは、誰にも わからない。しかし、のこされた遺産は、とうぜん それにふさわしい人間にゆずられるべきだ」 ý ý 「私の仕事は、この山神家で、 死ぬまで、ごほうこうするつもりだ」 ý ý 「私は、どくしんだ」 ý ý 「何もしらないな」 ý ý 「何もしらんといっているだろう」 ý ý 「あれは、だんなさまのかんがえられたことだ」 b20a 「やはり、私があのとき、おとめすればよかった」 ý 「だんなさまに、借金をしていた人間がいたのか? ...いや、私には、そんなこころあたりはない」 ý ý a129 「この伝説館は、だんなさまが、長年のゆめを じつげんするために、たてられたものだ。 私には、この屋敷をおまもりする ぎむがある」 ý ý c20a 「ああ、たしかに、だんなさまは、おおおくさまの おなかをいためられた おこさまではない。 しかし、そんなことは、こんどの事件には、 何も関係ないだろう」 ý ý a011b025 「この家の中に、犯人がいるなど、 かんがえたくもないことだが、それが じじつなら、 しかたがないことだ...」 ý 「だんなさまは、人にかんしゃされこそすれ、 うらまれるような おかたではなかった。 きっと、こんどの事件は、だんなさまのことを ねたんだものの、しわざにちがいない」 a127 「円陣くん、あの氷沼享平という男には、 きをゆるさないでくれ。じつは、私は、こんどの 事件には、かならずや、あの男が からんでいると思っているんだ」 920a 「円陣くん、たとえ、どんなことでも、わかったことが あれば、私にしらせてくれ」 8223 「捜査は、すすんでいるかね」 840a 「いや、べつに...」 e42a 「きみに、話すことは、何もない...」 「私、ひとりだ」 「何だね?」 「何か用かね?」 竜野は、部屋をでていった。 8424 「...」 f41d8425 「そ、それは...」 a426 「だから....」 9424 「...」 9425 「私は...」 「どうして...」 a424 「...」 「おう....」 b426 「うっ...」 「私は、何もしらない」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý 8429 「えっ、おおおくさまの部屋から、それが、みつかった だと...?」 f426 「おおおくさまは...おお...」 ý 942f 「そのナイフは、私の部屋から、 影次郎さまが、もっていかれたものだ...」 9426 「私は、影次郎さまを、おとめできなかった」 ý b424 「...」 a425 「そ、それは...」 c426 「おおおくさまは...」 c424 「...」 b425 「私には、いえない...」 「...」 d424 「...」 c425 「ううう...」 d426 「だんなさまは、家族のものには、どうしても、 だまっていてほしいとおっしゃった...私は、 だんなさまのおことばとおりにうごいたが、 それは、まちがいだったようだ...」 8427 「わかった...円陣くん...すべてを話そう」 竜野は、けついをこめた こえで、そういった。 「私は、だんなさまが、ご病気であることを いぜんからしっていたのだ...」 「そして...私は、しっていた... 山神貿易のけいえいが、だめになっていることも。 そうなのだ、円陣くん...おくさまや光彦さまは ごぞんじないが、山神貿易は、もうだめなのだ」 「だんなさまは、この山神家をいちだいで、 ここまでおおきくされた。しかし今、それは、すべて こわれていこうとしている。山神家にのこっている のは、この伝説館だけなのだ...」 「私は、この山神家をおまもりしたかったのだ。 私は、ご家族のみなさまに、ごしんぱいを おかけしたくは、なかったのだ...だが、じたいは ここまできてしまった...」 「けっきょくは、影次郎さまたちを、おいつめる ことになってしまった。 ...円陣くん、この伝説館の地下には、 秘密の迷路がある」 842d 「影次郎さまは、そのことをごぞんじだ。 いま、屋敷から、すがたを けされた人たちは、きっと、そこにいる... たのむ、みなさんを、おさがししてくれ...」 「何で、ございましょう?」 そこには、今田たみがいた。 「何でございましょう?」 たみがいた。 「おおくさまに、何か、ごようですか?」 おたみが、でてきた。 「何か、ごようでございましょうか?」 そこには、おたみがいた。 ý 「ちょっと、話をききたいんだが...」 「はい、どうぞ」 龍之介は、おたみに話をきくことにした。 「この部屋を調べていいかね」 「どうぞ...ごじゆうに」 「ここは、現場ではありません」 「私は、何もいたしておりませんから、あなたさまに、 尋問などされるおぼえは、ございません」 ここで、仲間をよぶことは、できません。 800dc023 「私は、何もぞんじません。だんなさまの 事件について、使用人の私が、もうしあげる ことなど、何もありません」 「私は、事件には、何も関係ございません」 ý ý 820b 「まさか、あの男が殺されるとは思っても おりませんでした」 ý e101 「だんなさまは、ごりっぱなかたでした」 ý ý 「あの男は、あやしげな男でした。私は、てっきり あの男が、だんなさまを殺した犯人かと、 思っておりましたが、ちがったようですね」 ý ý b102 「おくさまは、だんなさまがなくなられても、 しっかりしてらっしゃいますよ。まるで、まえまえから、 こんなことがあるのではないかと、かくごされていたかの ようです」 ý ý 「おおおくさまの おせわは、すべて、 この私がさせていただいております」 ý ý 「影次郎さまは、こどもの時から、すこしも おかわりになりませんよ。いつも、お兄さまに、 ごめいわくばかりかけていて...」 ý ý 「影次郎さまのおくさまです」 ý ý 「光彦さまは、おうまれしたときから、この私が、 おせわをさせていただきましたが、光彦さまが、どうも お気がよわいのは、むかしからのことです」 ý ý 「雪江さまも、もうすこし、山神家の嫁らしく ふるまってくだされば、よいのですが。いつまでも、ああ では、こまったものです...」 ý ý 「光夫さまは、ちかごろ、おべんきょうもなさらず、 かつどうしゃしん などというものに、うつつをぬかして らっしゃるようです。いったい、りつさまは、 どういう ごきょういくをなさっていることか...」 b20b 「光夫さまは、すぐにかっとするたちで... おわかい人は、ぜんごのみさかいをなくして、 思わぬことをすることがありますから、こわいですよ」 ý 「絹代さまも、お母さまににて、なかなか、 お気のつよい おじょうさまでございます」 ý ý 「光彦さまの、おぼっちゃまでございます」 ý ý 「麗子さまのようなお人を、モダンガールと およびするのかもしれませんが、私のようなものには、 ああいうのは、すこしもよろしいとは思えないのです。 けっきょく、冴子さまの娘さんですからね...」 ý ý 「あの男は、しょうせつかだとかいう話ですが、 ほんきにしては、いけません。あの男は、この家に、 わるいたくらみをもって、はいりこんできた男です」 ý ý b10d 「うちの執事です」 ý ý 「私で、ございます」 ý ý 「したばたらきの女中です」 ý ý 「私は、山神家の女中頭です。舞踏会 では、みなさまに、おさけをおくばりいたしましたが、 あの時、だんなさまの、おのみになったグラスは、だんな さまが、ごじぶんで、ついでこられたものなのです」 「私には、何もわかりません」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý a20b 「私のものでは、ございません」 ý ý ý ý ý c20b 「だんなさまに、お金をかりていた人が、 いたのですね...そうでしたか...いえ、私には こころあたりなど、ございません」 ý ý 「私は、何もしりません」 ý ý ý ý ý 「私のような使用人には、まったく 関係のない話です」 ý ý 「私の仕事は、この山神家におつかえして、 おおおくさまのおせわをすることです」 ý ý 「私は、ひとりものでございます。はい、ずーっと、 ひとりでございます。ですから、この山神家の かたたちが、私にとっては、かけがいのない家族の ようなものでございます」 ý ý 「だんなさまが、どうして、あんなことをされたのかは、 私には、わかりません」 ý ý b129 「おおおくさまは、この屋敷をたてられるのに、 はんたいされていました」 ý ý 「じつは...だんなさまと、影次郎さまは、 母親のちがうご兄弟なのです。事件には 関係のないことかもしれませんが、しっておいて いただきたいと思いましてね」 ý ý 8011c025 「円陣さんでしたね...まあ、事件のために、 この屋敷の中を捜査するのは、しかたのない ことですが、くれぐれも、おおおくさまにだけは、 しつれいのないように、おねがいしますよ」 ý 「それにしても、この山神の家の中で、 殺人事件がおこるとは... これから、この屋敷は、どうなるのでしょう」 b127 「それにしても、山神家で、こんな事件が つづけておこるなど、ほんとうに信じられないことです。 なにかに、たたられているような気がしてきますよ」 920b 「円陣さん、あなたは、なかなかのお人のようです。 このおたみ、だてに年は、とっておりません。 人をみる目は、あるつもりです。あなたさまなら、 きっと、この事件をかいけつしてくださるでしょう」 92238221 「円陣さん...じつは、あなたのおみみにいれて おきたいことがあるのです。ええ...それは、殺された だんなさまの、おうまれについてなのですが...」 そこには、おたみのほかには、誰もいなかった。 「何でございましょうか?」 龍之介は、そうさくをやめた。 ý 龍之介は、そうさくをやめた。 ý 「何か、ごようでしょうか?」 そこには、清水春がいた。 「何でしょうか?」 「何か、ごようですか?」 そこには、光一郎のせわをしているお春がいた。 「何か、ごようですか?」 お春ちゃんがいた。 ý ý 「お春ちゃん、話をききたいんだが...」 「はい」 「ちょっと、この部屋を調べたいんだ」 「はい、どうぞ」 「雪江さまに、しかられますから、 ここは、調べないでください...」 ここは、現場ではありません。 「円陣さま、あたしは、何もしていません」 ここで、仲間をよんだりできません。 800ed023 「あ、あたしは、何もしりません....」 ...ぼくのことを、こわがってるのかな?... 「あたしは、何もしりません。 ほんとうです。しんじてください」 ..わかってるよ、お春ちゃん、きみはむじつだ.. ý ý ý 820c 「円陣さま、あたし、こわいです。 どうして、氷沼さまは、殺されたのですか?」 ý 940b 「おたみさんが、殺されるなんて... どうして、こんなことばかり、おこるのですか?」 「だんなさまは、あたしみたいものとは、 めったに、くちをおききになりませんでした」 a40b840c 「あの...円陣さま、もしかしたら、だんなさまは どこか、お体が、おわるかったのではないでしょうか? だんなさまは、ちかごろ、かおいろもよくなかったし、 なんだか、いつも、つかれてらっしゃるようでした」 ý 「氷沼さまは、この家のことを、本にかくと おっしゃっていたのに...」 ý ý 「おたみさんには、いつも、しかられてばかり いましたが、おたみさんは、いなかのばあちゃんに よくにて、いい人でした」 ý ý 「おくさまには、いつも やさしくしていただいてます」 ý ý 「おおおくさまの おせわは、すべておたみさんが することになっています」 e425 「おたみさんの事件があってから、 おおおくさまのごようすが、おかしいのです。 あたしに、影次郎さまが、どうしているかと なんども、おききになります」 ý 「影次郎さまは、いつも、おこっているような おこえで、話をされます」 「影次郎さまが、何かなさったのですか?」 ý 「影次郎さまの おくさまです」 ý ý 「光彦さまは、だんなさまが なくなられた時、 すこしも かなしそうな ごようすでは、なかったです。 あたしは、父ちゃんが死んだ時いっぱいなきました。 お金もちの人は、そんな時も、ちがうのですね」 ý ý 「光彦さまのおくさまです。 とても、きれいな おかたです」 ý ý c108 「光夫ぼっちゃまは、あたしに、いろんな話を してくださいます。でも、あたしは...がっこうに いってないから、ぼっちゃまの話は、むずかしすぎて よく、わからないのです...」 b20c 「円陣さま、光夫ぼっちゃまは、 だんなさまを殺すような、おかたではありません」 ý a109 「絹代さまは、じょがっこうに かよって らっしゃるのですよ」 ý ý 「光一郎さまは、ほんとうに、おかわいいです」 ý ý 「麗子さまは、あたしみたいなものとは、 あまり、くちを おききになりません」 ý ý f10c 「氷沼さまは、いつも、このお屋敷の中を うろうろしてらっしゃるのですよ」 ý ý 「竜野さんは、あたしに、だんなさまの事件の ことは、何もいうなと、おっしゃいました」 ý ý 「おたみさんは、だんなさまが、こどものころから このお屋敷で、はたらいているそうです」 ý ý 「あたしです」 ý ý 「あたしは、ここの女中です。 あたしは、仮装舞踏会のときは、 台所で、ずっと、おさらをあらっていました。 だから、ほんとうに、何も しりません...」 「あたしは、何もしりません」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý a20c 「それは、雪江さまのものです。 雪江さまがどこかで、おとしたといって、 さがしていらっしゃいました」 ý ý 「あたしには、何もわかりません」 ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý ý c20c 「あたし、氷沼さまに、タオルをもってくるようにと、 いわれたのです。でも、ドアのそとから、なんど、こえを かけても、なかなかおへんじがなくて...それで、 ヘいじさんに、中をみてもらったら...」 ý ý 「あたしには、何もわかりません」 ý ý 「あたしのしごとは、このおやしきの ゆかの、そうじです」 ý ý 「とうちゃんは、病気でしんでしまったけど、 家には、おかあちゃんと、ちいさな いもうとと おとうとがいます」 ý ý b40b 「あたしの父ちゃんは、おなかの中に、わるいはれもの ができて、死んだんです。その病気は、どんな薬を つかっても、なおらないそうです。だんなさまのごようすは、その父ちゃんのようすに、よくにていました」 ý ý 「あしは、何もしりません」 ý ý 「あたしは、あのとき、台所で、おさらをあらって いました」 ý ý c129 「このお屋敷に、はじめてきたときには、ほんとうに びっくりしました。だって、あたしの家なんか、ここの 物置よりせまいんです」 ý ý b011d025 「あたしは、何もしていませんから、 どうか、つかまえないでください...」 ...わかってるよ、お春ちゃん... ý 「あの...いま、光一郎ぼっちゃまが おやすみになっているので、 どうか、しずかにしてください」 c127 「あたし、ほんものの探偵さんを見たのは、 うまれてはじめてです...」 ...そんなに、みつめられると、てれるな... 920c 「べつに、ありません」 a223921a 「円陣さま、どうか、ほんとうの犯人を つかまえてください」 840b 「円陣さま、あたし、こわいです。 はやく、犯人をつかまえてください」 f42a 「だんなさまが、もし、ご病気だったとしたら、 みなさまは、それをごぞんじだったのでしょうか?」 お春のほかには、誰もいません。 「何でしょうか?」 龍之介は、そうさくをやめた。 ý 龍之介は、そうさくをやめた。 ý 龍之介は、うすぐらい伝説館の地下の 迷路をあるいていた。 ドアの前です。 ドアには鍵がかかっていて、あきません。 龍之介は、ドアをあけて、 地下室の中に、はいった。 ...中には、誰もいないな... 8801 部屋の中には、何もなくて がらんとしていた。 ý ý 8802 ..誰もいない... ý ý 8803 ...ここには、何もない... ý ý 8804 ...何も、ないな... ý ý 8805 ...影次郎たちは、どこにいるんだ?... ý ý 8806 ...ここにも、誰もいない... ý ý 8807 ...何も、ないぞ... ý ý 8808 ...おい、みんな、どこにいるんだ?... ý ý ý ý ý ý 880d ...誰も、いないぞ... おや、部屋のすみに、こんなものが...! これは、山神光太郎の遺言状だ! ほかには、なにもないな... ý ý ý ý ý ý ý 880a880e 龍之介は、その遺言状を手にとった。 それには、こう かかれていた。 ...私の財産は、すべて、山神光一郎に ゆずると... ý ý ý ý ý ý ý ý この部屋には、とるようなものは、 なにも、ありません。 880b880f8810 龍之介は、やすらかに、ねむっている光一郎を じっと、みた... ...山神光太郎は、このあかんぼうに 山神家のみらいを、たくしたのか... 龍之介は、光一郎をだきあげた... 「わかりました...円陣さん... これいじょう かくしても、むだなことです... すべてを、すべてを...お話しいたしましょう」 山神サダは、 しずかだが、けついを こめた こえで、そういった。 「円陣さん、こんどの事件は、すべて この私のせいで、ございまする....」 「そうでございまする...影次郎が、 あの氷沼享平を、殺したのも...」 サダは、そこで ことばをとぎれさせ、 ゆっくりと ためいきを、ついた。 そして、こう ことばをつづけた。 「おたみが、殺されたのも... もとをただせば、あの子を、あんな人間に してしまった...私のせいで、ございまする...」 「みんな、私のせいで...ございまする...」 「話は、50年も前にさかのぼることです。 この私は、ようやく、主人とのあいだに、 子供をさずかりました。しかし、そのとき...」 「私の夫は、そとで、私いがいの女に、子供を うませておりました。ところが、そとにできた子供の 母親は、さんごのひだちがわるく、すぐに死んで しまったのです」 「私は、主人に話して、その子供をひきとり ました。主人は、そとでうまれた子供に、 光太郎と、そして、私が、うんだこどもに 影次郎と、なづけました...」 「それから、しばらくして、主人は、ふじの病に たおれ、このよをさりました... のこされた私は、 光太郎と影次郎の、ふたりのこどもを ひとりで、そだてることになりました」 「私は、光太郎と影次郎を、何の わけへだてもなく、そだてたつもりでした。しかし、 ふたりの息子は、まったく、ちがった人間に そだっていきました」 「光太郎と影次郎は、まるで、 その名のとおり、それぞれが、人生のおもてとうらを 生きるような、人間になってしまったのです」 「光太郎は、がくもんもでき、仕事もできる 男になりました。そして、この山神の家を どんどん、おおきくしてくれました。でも、どこか、 そのこころは、いつも、つめたくかんじられました」 「光太郎は、私のこころの中にある、わだかまり を、どこかで、かんじていたのかも、しれません... いつのまにか、つよく生きることだけが、光太郎 の人生の、もくてきになったようでした...」 「それに、くらべて、影次郎はといえば、いつも、 仕事をしっぱいし、家族の者たちからも、きらわ れる人間になりました。こころのおくで、ふたりが、 はんたいであればと思ったことも、ありました...」 「しかし、人生とは、わからないもので、ございます。 ここまで、せいこうをおさめた光太郎が、なくなった 主人とおなじ、ふじの病になろうとは..そして、 そのとたんに事業も、うまくいかなくなろうとは」 「光太郎は、じぶんの人生で、いままでない はげしい、きょうふとざせつをかんじたようでございます。 あの仮装舞踏会の前日、めずらしく、 光太郎が、私の部屋にやってきました」 「そして、母親の私に、こういったのです。 ...じぶんは、たったいま、死にたいと... 病気にまけ、仕事にしっぱいした、 ぶざまなすがたを、誰にも、みせたくないと...」 「光太郎は、それだけいうと、部屋のすみに あのストリキーネのはいった薬ビンをおいて でていきました。光太郎は、私に、すくいを もとめに、きたのでした...」 「そして、そのつぎの夜、仮装舞踏会で、 死神のすがたのまま、死んでいきました...」 「そうです...あの仮装舞踏会の夜、 光太郎ののんだワインに、どくをいれたのは、 この...この私でございます....」 「光太郎は、あのとしになって、はじめて、 この私をたより、たのみごとをしにきたのです。 私は、あの子のはじめで、さいごのたのみを きいてやりました」 サダは、そこで、ゆっくりと、ふせられていた目 をあけた。 「...そうでございます。私は、目が... 目がみえまする...」 「私は、光太郎が、この伝説館をたてたとき この屋敷の中での、光太郎と影次郎の ふたりの人生が、あまりにちがうことを、みることが、 こわかった...」 「円陣さん... すべては...このおろかな としよりのかんがえで はじまったことで、ございました....そうです、 私が犯人でございまする...」 サダは、そういって、 さいごに、そのやつれたかおに、さびしげな ほほえみを うかべた... 山神家でおきた、れんぞく殺人事件の謎は 円陣龍之介と5人の仲間たちの手で ぶじ、かいけつした.... 時は、1921年... 伝説館とよばれる、うつくしい洋館があった。 しかし、そこでおきた事件のけつまつは なぜか、せつなく、ものがなしかった... そして、ゆうぐれに、こはくいろにそまる 伝説館のうつくしい すがたは、 そこをさる龍之介たちのこころに、 いつまでも、のこっていた... DIRECTOR RIKA SUZUKI MAIN PROGRAMMER KAZUYUKI YAMAMOTO WRITTEN BY RIE KAGETANI SCENARIO CHIEKO SAOTOME MUSIC YOSHIHIKO MIYAZAKI ART DIRECTOR MINAMIHATA RIMEI SCENE GRAPHIC HIROMITSU TAJIRI CHARACTER DESIGN IKUKO TO FONT DESIGN FUJIMARU MANAGER MAHO SHIROUCHI SUPERVISOR BILLY K OKAZAKI SPECIAL THANKS TO CHIKARA SUZUKI EXECUTIVE PRODUCER YASUMASA SHIRAKURA COPYRIGHT 1990 NCS RIVERHILL SOFT E N D EXTEND INTRO. DIRECTOR すずき りか MAIN PROGRAMMER 山本かずゆき SCENARIO すずき りか MUSIC みやざき よしひこ GRAPHIC WRITER とう いくこ CHARACTER DESIGN とう いくこ FONT DESIGN ふじまる 山本かずゆき THANKS TO ねこにゃん ーゆうこー「S.MARINE」 すずき ちから「NCS」 いちまる としひこ おんがくデータコンバータ メッセージコンバータ おかざき かずひろ おかいあげ ありがとうございました! MAKING DATE 1989.6.9ー10.18 E N D